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そもそもの原因は
なんでこうなったんだ?
なんで俺は康介君と喧嘩してんだ?
屋上でいつもの場所で横たわり、一人ぼんやりと考える。
……まあどう考えても俺が悪いのはわかっている。
尻ポケットの携帯が小刻みに震えた。誰だろう? 康介君だったらすぐに謝らねえとな……なんて思ったけど、画面を見てイラっとした。
周からのメール『今すぐに教室に来い!』……何様だよ! そもそもの原因はこいつがおかしな事を言ってきてからだ。何を偉そうに教室に来い! だよ。クソが!
シカトしてもよかったんだけど俺も言いたいことが山ほどあるし、急いで教室に戻ることにした。
教室ではさっきまで爆睡していたはずの周が起きていて、見るからに不機嫌そうな顔をしている。俺の姿を見るなりズカズカと不機嫌オーラ全開で俺の所まで歩いてきた。
「修斗! 何やってんだよ! 竜太がここまで来たぞ! ……そいつらに絡まれてるし!」
横にいたクラスメイトを指さし文句を言ってる。
もう、知らねえよ……
見るとそいつらは顔に痣を作っていた。大方こいつらが竜太君に軽くちょっかい出したんだろうとわかるけど、周に殴られるほどの事をしたんか? きっと、ただ教室に来た竜太君と喋っただけなんじゃないの? そのくらいのことでブチ切れて手を上げて……竜太君きっと驚いただろうな。
ここ最近の周も尋常じゃないくらいイラついていた。俺も周もイラつき過ぎだろ……
「で? それはわかったけど竜太君はどうした?」
「追い返したに決まってんだろ!」
当たり前のようにそう言う周に呆然とする。こいつは馬鹿なのか? そんなの可哀想すぎるだろ。竜太君の心情を思ったら胸が痛んだ。
「竜太君、お前に会えないし連絡も取れないって寂しがってたのに……そんな態度はあんまりじゃね?」
どんだけ勝手なんだよ。竜太君は事情知らないんだから不安になるに決まってるだろうが。
「せめてメールの返事くらいしてやれよ!」
俺が言うと、少しは気がついたのか周は元気なく「うん…」と頷き また自分の席について突っ伏して寝始めてしまった。
そう、これは一週間くらい前の話──
「俺さ、バイト増やして忙しくなるから竜太の事はお前に任せた!」
周の突然の宣言。竜太君の事は任せた! って全く意味がわかんねえ。
「なに? 任せたって。どうしたの? 理由言え、わけわかんねえよ」
俺が竜太君を任される意味がわからない。子どもじゃねえんだから……
「いやさ、もうじき竜太の誕生日なんだよ。誕生日は竜太が行きたい所に連れてってやって、行きたいって言ってたレストランで二人で飯食うの! 欲しい物も買ってやりたいし……だから任せた!」
だから……
「だから! それでなんで俺が竜太君を任されるんだよ! 意味わかんね。いつも通りじゃだめなの?」
ほんと全くもって意味がわからない。
「もー、わかんねえの? 俺はサプライズで竜太を驚かせたいの! 竜太と一緒にいたら俺、サプライズのこと喋りたくなっちゃうじゃん? でも喋っちゃったらサプライズにらならねぇじゃん! だからね、誕生日まで俺、竜太から離れるから。それと禁欲! だから竜太のこと頼んだぞ!」
「………… 」
「聞いてる? だからさ、竜太が俺の事を気にしないようにお前が構ってやってよ」
恐ろしく自己中だなおい! サプライズしてえんなら喋るの我慢しろよ! そんなの当たり前だろうが、バカか?
「そんな事して竜太君と揉めても俺は知らねえよ? それって誕生日まで竜太君の事ほっとくってことだろ?」
俺が構ってやったところで周が竜太君のことを放っておくんなら、絶対そのうち不安になるだろうが。不信感持たれたもいいのかよ……
面倒事はゴメンだ。
でもこいつはこうと決めたら譲らないのも知っている。俺がいくら言ったところでこの計画を変える気なんてさらさらないんだろうよ……
「ん? そんなの大丈夫だろ? よろしくな 」
……お前が大丈夫かよ。
あまり気が乗らなかったけど、一度言い出したら聞かない周に何を言ってもしょうがないから、俺は諦めて引き受けることにした。
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