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それぞれの心配事
周さんの態度がショックで保健室に逃げた僕。保健室のベッドで眠りこけてしまい、目が覚めるとすぐそこに修斗さんが椅子に座り僕を見ていた。
ちょっと驚いたけど、修斗さんと話したかったからちょうど良かった。
僕に優しく微笑みかける修斗さんが話し出す。
「竜太君、周の事心配だよね? 何日も会えてないでしょ? それなのに酷いよね。さっき追い返されたって聞いたよ」
修斗さんに全て見透かされ、そう言われると悲しさが込み上げてきて涙が溢れる。
「あ……ごめんごめん! 泣かないで。大丈夫だから。竜太君、大丈夫だから安心して。周に口止めされてるから全部は言えないけど……あいつなりに理由があっての事だから。竜太君もそのうちわかるよ」
修斗さんが僕の涙を拭いながら話してくれた。言ってる意味はよくわからない。
「理由って……僕、周さんを怒らせるような事しちゃったのかな。メールしても返事もしてくれないし電話にだって出て…… 」
「違うよ! 竜太君のせいじゃないから、本当大丈夫だから! そのうちすぐ理由がわかるから。な? しんどいだろうけど、もう少し周のやりたいようにやらせてあげて……」
僕の話を遮るほど修斗さんが慌ててフォローしてくれた。
「あ、でも俺が竜太君にこうやって喋ったことは周に内緒な。一応口止めされてんだ。でもあまりに竜太君が可哀想でさ……よろしくな」
なんかよくわかんないけど、僕のせいじゃないのかな? 大丈夫なのかな……でももう疲れちゃった。修斗さんもそう言ってることだしもう気にするのはやめよう。
「………… 」
僕のことよりも康介の事だ。ちょうどよかった。ここなら他の人もいないしゆっくり話せる。
「ねぇ、修斗さん? 康介と何があったんですか? あんなに怒ってる修斗さんも康介も僕見たことないし……びっくりしちゃいました」
カラオケでのこと、あの後康介は普通にしてたけどやっぱり僕から見れば普段より全然元気がない。そうだよ……康介、酷く落ち込んでた。悲しんでた。
「それに修斗さん、酷いです!康介、康介すごい傷ついてますよ? あんな悲しそうな康介だって僕は初めて見ました!」
思い切ってそう言うと、修斗さんはスッと真面目な顔になった。
「うん、そうだよね……わかってる。全部俺が悪いんだ。 ごめんな、竜太君の大事な親友を傷付けてしまって……本当にごめん」
修斗さんはそう僕に謝ると俯いてしまった。
「修斗さん…… 」
僕に謝ったってしょうがないじゃん。康介とちゃんと話してあげてよ。
しばらく俯いていた修斗さんがパッと顔を上げた。
「康介君の事は、俺がちゃんとするから。心配かけてごめんな。こっちの事は気にしないでいいから……」
それだけ言うと修斗さんは保健室から出て行ってしまった。
一人ベッドの上で座っていると、それまで黙っていた高坂先生が話しかけてきた。
「なんか揉め事? 大丈夫なのか? そういえばさ、修斗くんは大丈夫? 最近よろしくない話が聞こえてくるんだよね……僕ちょっと心配なんだよな」
なに? よろしくない話って……
「修斗さんがどうしたんですか?」
そんな風に言われたら気になってしまい、僕は先生に聞いた。
「いやね、修斗くんってなんて言うの?奔放……なところがあるでしょ? オープンでノリもいい。特定の人も作らず、誘えば気軽に相手してくれるし。それが最近は付き合いが悪いし、情緒不安定みたいでさ。そんな修斗くんに腹を立ててる奴らがいるみたいなんだよね」
「………… 」
「散々修斗くんに相手してもらってたくせに、いざ相手にされなくなったからって恨むのっておかしいよね。 修斗くんはまわりをよく見てる子だからきっと本人はわかってると思うけど……確かに最近不安定に見える時があるから、どうしても気になっちゃってさ」
情緒不安定……
確かにそんな感じなのかもしれない。
康介も他の誘いを断って自分のところに修斗さんがくるって言ってた。毎日見ていて修斗さんが康介のことを気に入ってるのは一目瞭然だけど、それでもイライラとして大ゲンカしてるくらいだ。
心配だな。
「一応僕からも修斗くんに会ったら注意するけど、竜太くんも修斗くんに会うことがあったら気をつけなって言っといて。修斗くんの事だから大丈夫だとは思うけどね」
康介は今日は学校休んでるし、心配だけど康介の事は修斗さんに任せてればいいのかな。
ちゃんと仲直りできますように……
周さんの事は修斗さんが僕に教えてくれた通り、知らないふりをして静かにしてよう。
どうせ返事は来ないだろうけど、今高坂先生から聞かされた修斗さんの心配事を周さんにも知っておいて欲しいから、僕はメッセージを送っておいた。
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