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伝える

僕は学校から帰り康介の家に行ってみた。康介のお母さんは留守だったけど、呼び鈴を押したら康介が出て来てくれた。 「………… 」 黙ったまま、自分の部屋に入る康介。僕も康介の後に続き、部屋に入った。 「康介、大丈夫? 休むなんて珍しいじゃん」 「………… 」 康介は何も言わない。 「今日、少しだけど修斗さんと話したよ。 修斗さん、自分が全部悪いって……いつも笑ってる修斗さんが真面目な顔してそう言ってたよ」 僕が修斗さんの話を始めたら、康介はバッと顔をあげた。康介も気になってるんだろうな。 「ちゃんと修斗さんと話さないと……喧嘩したままじゃ嫌でしょ?」 康介ったら怖い顔…… 「どのツラ下げて会えばいい? 俺、興奮してあんなに暴言吐いちゃって……あんな怖い顔した修斗さん、俺見たことない。あんなに怒らせるような事をしちゃったんだよ俺は……」 大きな溜め息……溜め息吐いたらその分幸せが逃げるとはよく言うけど、こんな盛大な溜め息なんて吐いたら一生分の幸せがどっか行っちゃいそうだ。 「でも俺、何で修斗さんがあんなに怒ったのか未だにわからないんだ……」 ……だからさ。 「それをちゃんと修斗さんと話した方がいいと思うよ? 大丈夫だよ。修斗さんもう怒ってないよ」 「竜……俺、修斗さんとどう接していいのかわからないよ」 「康介は、修斗さんの事嫌い?」 パッと僕の顔を見て、康介は小声でブツブツ言いはじめる。 「そんなわけない……好きだし。あ、でも友達としての好き……だと思う。んー、どうなのかな……好き、なのかな……」 康介ってば悩みすぎ。 「そういうのってさ、直感でわからない? 修斗さんとちゃんと顔見て話しなよ。今思ってる事、そのまま素直に伝えてみなよ」 康介は僕と話をするより、早く修斗さんと話した方がいいと思いそう伝えた。 あ! そうだ、忘れるところだった。 「あとさ、康介小峰君ってわかる? なんか今日話しかけられてね、返事を早くちょうだいだって。なんの事?」 僕が聞いても、康介はさっきから修斗さんのことを考えているのか半分上の空な感じで「うーん」なんて適当に返事をされてしまった。 ま、いっか。一応伝えたし、それ程大事な事でもなさそうだしね。 「明日は学校ちゃんと来るんだよ?」 あとはそれだけ康介に言って、僕は家に帰った。 家に帰ってから周さんにメッセージを入れてみた。 周さん、忙しいんですか? なかなか会えなくて寂しいです。 でも僕は周さんが大好きです。 ── それだけ伝える。 言わなくてもわかるなんて思わない。言ってくれなきゃわからない。 好きなら尚更、ちゃんと伝えたいって僕は思った。

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