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康介のもやもや

昼休み、俺は竜と一緒に屋上へ行く。そう、いつものお決まりのパターン。 購買で買った焼きそばパンとサンドイッチ、牛乳を膝に乗せたまま俺はぼんやりとしてしまった。 やっぱり頭の中がしっかりしなくて変な感じ…… 修斗さんも周さんも屋上来ねえし。否! 来てほしくないし…… 俺の隣で弁当を広げ、黙々と食べている竜を見る。相変わらず美味そうなお弁当。思わずじっと見てしまったら、竜に「食べる?」と聞かれてしまった。 「……あ、いや、いらない」 そう答えると、いきなり両頬をパチンと叩かれた。 「康介! ぼんやりし過ぎだよ! しっかりしなよ」 竜と一緒にいるのにまるでここには自分一人でいるかのよう。修斗さんの事をただぼんやりと考えていた。どこで飯食ってんだろう? とか、学校来てるかな? とか……それ以前に仲直りしなくちゃなんねえのに、それは置いといて関係ないことばっかり考えてた。 「康介さ、小峰君といつから知り合いなの? 何か接点あったっけ?」 竜に聞かれる。小峰? ああ、そういや俺はあいつといつ知り合ったんだっけ? ちょっと考え思い出した。 「確かテニス部の練習試合の時だな。小峰ってテニス部だったろ? 多分その時……」 ふぅん、と竜は自分から聞いておきながら全然興味なさそうに頷いた。きっと俺の気を紛らわそうと話題を振ってくれてんだろうな。 そういや周さんとはどうなんだ? 「そういや竜は、周さんと会えたのか?」 聞いてみたら竜は少し嬉しそうに話し出す。その表情だけでもう大丈夫なんだと安心できた。 「うん! 久しぶりにメールの返事をくれたんだ。修斗さんがトラブルに巻き込まれないように気をつけてって僕がメールを送ったんだけどね、あいつなら大丈夫って返事がきたの。たったそれだけの返信だけど、今まで何送っても無視されてたから本当凄い嬉しかったんだ!」 「………… 」 嬉しそうな竜はともかく、修斗さんがトラブルって何の事だ? 俺が竜の事をジッと見てたら、しまったって顔をして竜が慌てた。 「あ……あのね、トラブルって言うのは、高坂先生が修斗さんの事でちょっとよくない噂があるからって……心配だって言ってたから。あ! でも修斗さんなら大丈夫だろうって周さんが言ってたからそんな気にしなくて大丈夫だと思う 」 めちゃめちゃわかりやすく竜が動揺しながら俺に説明してくれた。 ……なんだよ、よくない噂って。ほんとに大丈夫なのか? まあ、俺が気にしたってしょうがない事なんだけどさ。気になるじゃねえか。 「ごめんね。なんか僕、変な事言っちゃって……でもね、最近付き合いが悪いとかいう理由で修斗さんをよく思ってない人がいるみたい。修斗さん強いし気が回る人だから心配ないとは思うんだけど、念のためね。周さんにも言っておいた方がいいかなって思ったの」 そういう事か…… 付き合い悪いって、俺が原因なんだろうな。 「でもさ、竜 よかったね。周さんからメール来て。会わなくなってからどれくらい? 俺もだいぶ周さんとは会ってねえよ?」 俺がそう言うと竜は少し寂しそうな顔になってしまった。 「一週間は会ってないよ。あれ? もっとかな…… 周さんどうしちゃったんだろうね。寂しいな。早く会いたいな」 竜はそう言って溜息を吐いて項垂れた。 そんな風に素直になんでも言えれば俺ももうちょっと可愛がられたのかもしれねえな。

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