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狼狽

部活に向かう人、下校の準備をしてる人、まだ結構な人数が残っている。 修斗さんのクラスを覗いてみるも姿が見えず。そして周さんが一番後ろの席で突っ伏して爆睡していた。 あれは起こしちゃダメなやつ。起こしたら絶対文句言われるからそっとしておこう。 俺は周さんに聞くのは諦めて自力で修斗さんを探すことにした。 廊下を見渡してもいないし、屋上かな? 屋上に向かう途中も、キョロキョロと姿を探す。修斗さんと会えないまま屋上についたけど、やっぱりここにもいなかった。 ……そもそも今日は学校に来てんのかな? 俺は保健室にも行ってみた。 高坂先生が俺を見て「どうした?」と聞いてくる。 「お兄ちゃんは元気?」 高坂先生にそう聞かれ、ちょっと返事に困ってしまった。なせが兄貴はこの人を毛嫌いしているのを知っていたからなんとも言えない。先生は兄貴に嫌われてんの知ってんのかな? 「ねぇ先生、今日は修斗さん来てません?」 聞いてみるも、今はいないって教えてくれた。でも午前中にはここでサボってたから学校には来てるらしい。 俺はうろうろと廊下を歩きながら、もう一回二年生のフロアに行ってみる。どうしても見つからなかったら今日は諦めようと思った。 下校の時間になってからだいぶ経ったため、人も少なくなっていた。 二年生のフロアに到着し、もう一度教室を覗いてみた。教室には相変わらず周さんが寝ている姿。 もう教室には周さんしかいないじゃん。この人いつまでここで寝てんだろう…… やっぱり今日はもう帰ろうかな……そう思った矢先、一人の先輩に声をかけられた。 「あれ? 君さっきもこの辺ウロついてたよね? 一年生でしょ? どうしたの?」 少し怖そうな顔の先輩。でも親切に聞いてくれたからその怖そうな先輩に聞いてみた。 「……あの、俺谷中先輩を探してるんです」 俺がそう言うと、その先輩は眉根を寄せて首を傾げた。 「何だよ、また修斗かよ! あいつモテモテだなおい……修斗なら、さっき人に呼ばれて出て行ったから、もし戻って会うことがあったら伝えてやるよ。……で、お前名前は?」 「鷲尾です」 「はぁ? 鷲尾って……ん? お前一年だよなぁ。同じ名前か? さっき修斗呼んでた奴も一年の鷲尾って言ってたぜ?」 「一年の鷲尾?」 一年には鷲尾って名前は俺だけだったと思うけど。てか、おかしくね? 俺はふと竜が言ってた事を思い出した。修斗さんがトラブルに巻き込まれないように気をつけてって周さんに連絡したとかそんな事を言ってなかったか? 修斗さんのことをよく思っていない奴らがいる……付き合いが悪いと言われてる……確かそんなような事を言っていた。 ゾッとした。 慌てて俺はその先輩に掴みかかってしまった。 「ねえ! その一年ってどんな奴? 修斗さんはどこに呼ばれて行ったんですか? どのくらい前?」 名前も知らないその強面の先輩のシャツを掴んで食ってかかる。先輩は俺の勢いに驚きながら「落ち着けって!」と手を払った。 「えっと、確かお前より全然小柄で可愛い顔した奴だったぞ? でもそいつ、鷲尾ですってちゃんと自分から名乗ったし。聞き間違えでもねえよ。 んとな……確か視聴覚室だっつってたかな ? あれから結構時間経つけど…… 」 そう思い出しながら教えてくれた。 誰だよそれ!俺じゃねーよ! でもとにかく視聴覚室! 「おい! ちょっと起きてよ! 周さん! もう散々寝ただろ! ほら、起きろコラっ! 周さん! 早く起きろってば!」 俺は教室で爆睡ぶっこいてる周さんを叩きおこす。さっきの先輩は、そんな俺を慌てて止めに入った。 「ちょっ、馬鹿! やめろって! 殺されんぞ!」 そんなの関係ない。周さんがいれば百人力だ。悪い予感しかしないこの非常時に周さんがいてくれたら絶対心強い。 慌てて俺を止めてた先輩は「どうなっても知らねえぞ!」と怒鳴りながらどっかへ逃げて行ってしまった。 ごにょごにょと何かを言いながらやっと周さんが顔を上げる。しばらく呑気に顔を擦っていたけど、俺の顔を見てあからさまに嫌な顔をした。 「なんだよ、康介かよ。なんでお前がここに……」 「修斗さんが大変! お願い周さん、早く来て! 」 俺は周さんの腕を掴み、強引に引っ張って歩きながら話をした。 「……だから、修斗なら大丈夫だって。あいつお前が思う以上に強えよ? 気にすんなって」 周さんがそう言うも、全然そんなんじゃ納得できない。修斗さんが強いのだって俺知ってるし。でも嫌な予感しかしないし、何かあったとしたらそれは俺のせいなんだ…… そう、俺のせい。 「……康介? 大丈夫か? お前、震えてんぞ。修斗なら心配ないって。落ち着けよ」 嫌だ……嫌だ。お願いだから無事でいて……

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