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お誕生日デート
今日は周さんとデート!そう、デート! そして今日は僕の誕生日でもある!
僕は嬉しくて嬉しくて、昨日の夜から浮かれてしまって寝付けなかった。明日は何を着て行こうか……とか、どこに行くんだろうか? ……とか、色々考えることが多すぎてワクワクしてしまった。
『朝から一日あけておけ』
たったそれだけの連絡。周さんたらそれしか言ってこないから、待ち合わせとかよくわからないまま僕はとりあえず早起きをして準備万端でリビングで連絡を待っていた。いつもお寝坊の周さんの言う「朝」と僕の思う「朝」が同じとも限らない。僕はいつ周さんから連絡が入るのかワクワクしながら自分の携帯を眺めていた。
八時半を回った頃、ピコンとメールが入った。
『もうすぐ竜太んち着く』
え? 嘘でしょ? もうすぐ着くって? やっぱり周さん早いっ! 僕は大急ぎで玄関を出て周さんを待った。
道の向こうを目を凝らし見ていると、周さんの姿が見える。きっとこの時の僕は、尻尾をブンブン振ってご主人様に飛びつく犬みたいだったと思う。それだけ僕はこの時を楽しみにしていたんだ。
周さんが近付いてくる。その姿を見て僕は少し首を傾げた。あれ? なんか雰囲気が……周さんにちょっと違和感。
目の前に来た周さんに僕は一瞬言葉がでない。髪が少し短くなって、明るい派手な色には変わりないけど、以前より少しトーンが落ちた明るい茶髪になっていた。
「あ! 周さん、髪型が違う! 凄いかっこいいです!」
今までの周さんも勿論カッコよかったけど、この周さんも凄く似合っていてカッコよかった。思わずそう言うと、周さんは凄い嬉しそうに笑ってくれた。
僕が周さんに見惚れてていると、グイッと手を掴まれる。
「竜太! 誕生日おめでとう! 」
そのままブンブンと手を振り、いきなり周さんにそう言われてまた驚かされてしまった。
「え! 周さん、僕の誕生日知ってたの?」
たまたま僕の誕生日だったのかとばかり思っていたのに……周さん、僕の誕生日だと知ってて今日のデートに誘ってくれたんだ。
嬉しすぎる!
「当たり前だろ? 今日は竜太が行きたいところに連れて行ってやる。時間もたっぷりあるしな。それに好きなもんも買ってやる。あ……でもあんまり高いのはダメだぞ」
にこにこしながら周さんが僕に言った。ここが外じゃなかったら今すぐ周さんにキスして抱きつきたい! 外だから……抱きついちゃダメだってわかってる。もどかしい! でも触れたくてうずうずしていると周さんに朝食に誘われた。
「とりあえず朝飯、竜太が前に行きたいって言ってたカフェ行くか?」
周さんが僕の言ったいたことを一々覚えていてくれてたのも感激だ。
「はい! 」
ちょっとの間だけ手を繋ぎながら、僕らは目的のカフェへ向かった。
女性の客が多くを占めるこのカフェに、男の二人組は目立つのか少し視線を感じる。でも僕は嬉しさに舞い上がってるおかげで何にも気にならなかった。
席に通されると迷わず食べたかったアサイーボウルを頼み、僕はそれを食べながら奢ってくれると言う周さんと支払いの事でちょっとだけ揉めてしまった。
だって周さん、僕の誕生日の今日は支払いは全て自分で払うなんて言うんだもん。せっかく楽しく二人で過ごすんだ。周さんばっかりに負担をかけさせるなんて僕は嫌だった。
結局、今日のこれからの予定を二人で決め、この後行く水族館と昼食は各々支払い、買い物とイルミネーション、夕食は周さんが出してくれることでお互い納得をした。
周さん、全部自分で払うつもりで普段のバイトに加え夜間とかの日払いのバイトに勤しんでいたらしい。そんな事して体壊したらどうするの!って僕が怒ったら、竜太が喜ぶことなら何だってするんだ! とはっきりと言われて複雑だけど嬉しくなってしまう。僕のために……と思ったら怒るに怒れないよね。
そんなやりとりを、お水を注ぎに来てくれた店員さんに見られていることに気付き、二人で赤面してしまった。
朝食も終え、カフェを出て電車で移動する。土曜日の午前中は結構混んでいて、人混みの苦手な僕はちょっと尻込みしてしまう。でも、電車に乗り込むと周さんが大きな体で僕を包むように人混みから守ってくれた。僕はドアに寄りかかり、目の前の周さんの服の裾を握って、僕より頭ひとつ分も背の高い周さんの顔を見上げた。
「ん? どした?」
そんな僕に気付き周さんが微笑む。
ここのところずっと構って貰えなかったからか、今日はとくに周さんにドキドキしてしまう。至近距離で見つめられ、堪らなくなり目を伏せてしまうも頬を撫でられまた顔を上げる。
「赤い顔して……具合悪いか? 大丈夫?」
僕の様子に周さんが心配してくれる。
違うんだ……
恥ずかしくて照れ臭くて、ドキドキが止まらないんだ。
「……ん、大丈夫です。周さん、恥ずかしいから……あんまり見ないで……」
僕は小さな声で周さんに訴えた。
そんな僕に周さんはふふっと笑い、僕の頭を優しく撫でた。
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