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最悪の再会

水族館の後は予定通りの公園に向かう。ちゃんと調べたんだ。今日なら竜太の好きそうな移動ドーナツ屋が出店してるはずだから…… 少し散歩していたら、案の定目敏く竜太がドーナツ屋を見つけた。 「周さん、あれドーナツ屋さんかな?」 そうだよ、こういうの好きだろ? 「竜太、食べたいんだろ? いいよ。腹減ったし。もうじき昼だしな」 絶対喜ぶと思っていたんだけど、竜太は飲み物だけでいいなんて言うからちょっと残念だった。 二人でベンチに座り、飲み物を飲んで休憩していると修斗と康介が現れて驚いた。竜が言うには俺がバイトに励んでいた時に色々とあったらしい。 それにしても修斗と康介、夫婦漫才みたいだな……いつの間にかあんなに仲良くなってるし。修斗もあんな事があったのに案外元気そうにしてるから安心した。 しばらくの間竜太とこっそりふたりの様子を観察し、気が付かれないうちに近くのファーストフードに移動した。 そこからが最悪だった── まさかあいつが現れるなんて誰が思うかよ。 中学の時と全く変わらない馴れ馴れしさと図々しさ、見てるだけで不愉快な存在。 やっぱり竜太を見て嫌な笑みを俺に見せた。 そのうち絶対こいつ竜太に手を出す……そう思えて仕方がなかった。 馴れ馴れしく俺を呼び、目の前の竜太の隣に座ったこいつは中学の時の同級生、凪沙(なぎさ)だ。 凪沙が俺に告白をしてきて、別に特別好きでもなかったけど断る理由もないから、なんとなく付き合い始めた。そして付き合い始めてわかった本性。 こいつは俺の事が好きだと言いながら、俺のまわりの友達に次から次へとモーションをかけた。もちろん修斗にも。とんだビッチだ。 それだけならともかく、凪沙は怪しげな薬を勧めてくる。兄貴がまたヤバい奴で、凪沙に狙われた修斗がその兄貴達によって軟禁された、なんて事もあった。凪沙を避ける俺にもその兄貴達が付き纏ってくるし、縁を切るまで散々だったんだ。 そんなクソ女が、俺の大事な竜太を紹介しろだなんて言っている。 冗談じゃない! 俺は凪沙の言動が気になってばかりで、竜太の様子がおかしかったのに全く気がつかなかった。 「……僕は帰りますんで、ごゆっくり」 突然そんな事を言い、出て行った竜太に唖然とするも少しして状況が飲み込めた俺は凪沙に怒鳴りつけ慌てて竜太を追った。 後から凪沙もついてくる。 「お前はついて来んな! ムカつく! 」 いくら言ってもヘラヘラ笑い、竜太とはどういう関係なのかってしつこく聞いてくる。余計な事を言って、これ以上こいつの興味が竜太に向いてしまうのが怖い。 「ただの友達だっつってんだろ!しつけえな!」 すると「あっ!」と小さく言った凪沙の視線の先に修斗と康介が見えた。 「竜太ーーー!! 」 俺が叫ぶと修斗が振り返り、凪沙に気づいたのか慌てて康介と逃げて行った。 ……よかった。 俺を追いかけていたはずの凪沙は、俺を追い越し凄い勢いで竜太の前に到着する。追いついてみるとやっぱり、凪沙は修斗の事を竜太に聞いていた。 「さっきは突然ごめんなさい。僕は今日は周さんと過ごす約束なので、やっぱり周さんと一緒にいます。すみませんが、あなたはここで遠慮してもらえますか?」 えらくはっきりと、そして今まで見たこともない怒った顔をして竜太が凪沙にそう話した。 竜太の気迫が伝わったのか、意外にあっさりと凪沙はその場から立ち去った。

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