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仲直りのキスとお買い物
周さんと二人で並んでベンチに座り、お互い謝って仲直り……できたのかな? 肩を抱いてくれる周さんにそっと寄り添った僕は、まだ少し不安だった。
僕の誕生日という特別な今日。僕のために一生懸命に準備してくれたせっかくの周さんの好意を、事情がわからなかったとはいえ僕は台無しにしてしまうところだった。嫌だったけど、僕だって何もあんなに怒ることもなかったんじゃないかって今になって思う。子どもの癇癪みたいになってる僕に対して周さんは丁寧に説明してくれた。
周さん、さっきから黙ってる……
お互い「ごめん」と謝ったけど、もしかしたらまだ怒っているのかもしれない。周さんをチラッと見てみると目が合ってしまった。
怖い顔をしたままの周さんが僕の腕をグッと掴み立ち上がる。
え……?
そのまま引っ張られ、公園のトイレへ連れて行かれた。
バタンと個室へ押し込まれると、そのまま唇を奪われる。
??
「あ……周さん?」
僕は一瞬の出来事に頭がついていけず、困惑してしまう。なんでトイレ? なんでキス?
「……ごめんな竜太。今日はお前が一番幸せな気分にならなきゃいけねえのに、こんな嫌な思いさせちまって。それに俺、俺の事であんなに逆上して怒ってる竜太見て嬉しく思っちゃった。最低だよな? ごめん! 俺、お前のこと好きすぎてダメだ……」
そう言うとまた周さんは僕をギュッと抱きしめてくれた。
「周さん? ……なんでトイレ?」
僕が見上げてそう聞くと、周さんは顔を赤くした。
「なんでって……キスしたかったからに決まってんだろ」
そう小さな声で呟く周さんを見て、僕も途端に恥ずかしくなり、周さんの胸に顔を押し付けた。
「……周さん、僕嬉しいです」
周さんの胸の中でモゴモゴと喋ると、周さんに頬を挟まれ顔を上げさせられてしまう。恥ずかしいから顔を隠してるのに、これじゃあ意味がない。
「もっかい……」
そう呟いた周さんは、僕の顎をスッと持ち上げ優しく蕩けるキスをしてくれた。
場所を移動して、只今僕らは周さんがよく行くというお洒落なショップで買い物中──
僕が欲しいものを買ってくれるんだって。
「……僕、周さんとお揃いのがいいです」
散々迷ったけど、やっぱりさっきのピアスの事が頭から離れなくてこう言った。周さんはそんな僕の言うことに嬉しそうに頷き、何がいいかと楽しそうに思案してくれた。
「竜太はピアス、穴開けてねえんだよな?」
周さんに耳にかかる髪を指先で払われる。うん、僕はピアスは開けていない。「開けるの怖いです」と言うと「わざわざ開けなくてもいいし」と笑われてしまった。
ピアスがダメでも、やっぱり普段から身につけられるアクセサリーがいいな、と思う。
「……あ! 」
僕はちょっと閃いて周さんの胸元に手をやり、さわさわと触ってみた。
「ちょ? ちょっと! 何? 竜太…… 」
突然胸を弄られ驚いた周さんが僕を見た。
「あ……ごめんなさい。周さん、ネックレスしてます?」
そう! ネックレスなら服の下に隠れるし、毎日肌身離さずつけられるかな、と思ったんだ。
「ネックレスね、今日はしてないけど、たまにするよ。 いいんじゃない? でもさ、このブレスもいいなぁって思ったんだよね」
周さんはそう言いながら、手にした物を僕に見せた。周さんの手のひらに乗っていたのはレザーの二連ブレス。金具がシルバーで、デザインもとてもシンプルでカッコいい。
「周さんって、おしゃれですよね!」
僕がそう言うと、ぱちくりと目を丸くして周さんは笑った。
周さんとお揃いで、尚且つ周さんが選んでくれた物なら凄く嬉しい!
「どうしよっか……竜太はどう思う?」
周さんが真剣な顔をして僕を見る。けど、もう僕は周さんが選んでくれた物がいいと決めてしまった。
「僕、それがいいです! 周さんが選んだくれたやつ」
そう伝えると、周さんははにかんで笑った。
しばらく色々見ていたけど、「後でちゃんとプレゼントするからこっち見ないで!」なんて、周さんは可愛いことを言ってレジに行ってしまった。
僕は店の端の椅子に腰掛け、周さんの買い物が終わるのを待った。
少し離れたレジのところで、周さんと店員が何やら楽しそうにお喋りをしている。何を話しているのだろう…… 結構時間がかかっていて、少しだけ不安になってしまった。
まだかな?
遠目で見ていると何やら小さな箱が二つ包装紙で包まれ、そのうちの一つにはリボンがかけられていた。それを周さんが受け取り、僕の方へ戻って来る。
「ごめんな、待たせた! これは後でな」
周さんはそう言って、チラッと僕に小さな手提袋を見せ悪戯っぽく笑った。
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