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帰り道
帰りの電車内、周さんと並んで座った。朝と比べてだいぶ空いているので、僕らが並んで座っても隣には人もいないからほっとする。
気分良く少々ほろ酔いな僕はうつらうつらしてしまって、どうしても周さんの肩に頭をぶつけてしまった。そんな僕のフラつく頭を周さんは掴んで、落ち着かないからと言って僕に肩を貸してくれた。僕は遠慮なく周さんの肩に寄りかかった。
しばらくウトウトとしていると、周さんの話し声で我に帰る。
「あ! お姫様起きた」
そう言って笑ったのは修斗さんだ。隣には康介もいる。
「あれ? いつの間に……」
僕が寝てる間にどうやら同じ電車に乗り合わせたらしい。顔を上げ康介を見ると、康介は怪訝な顔をして僕を見た。
「なあ竜、目が腫れてない? なんか赤いし……周さんに泣かされたの?」
康介、ちょっと怖い顔をして周さんを睨んでる。
「さっきだって竜、凄え怒って一人でいたじゃん 」
「あれはもういいんだよ。竜太はさっき嬉しくて号泣したんだもんな?」
康介に責められた周さんは、そう言いながら僕を見て笑った。そうだった。あの時怒って飛び出した僕は康介と修斗さんと会ったんだっけ。二人にもきっと心配をかけてしまったんだ。
「本当に? 喧嘩したんじゃねえの? 竜? 大丈夫なのか?」
「しつけえぞ康介。竜太は俺からのプレゼント見て大泣きだったんだよ。幸せだって言ってんだからもうほっとけよ」
「……もう! 大丈夫だから……周さんももう恥ずかしいから言わないで下さい!」
ただでさえ泣き虫だと思われてるのに、嬉しくても泣いてるなんて男なのにみっともない。
「そか、よかったな竜」
僕は康介に「うん」と頷き、そして修斗さんを見た。康介と修斗さんを交互に見てから「修斗さんたちも今日はデートだったんですか?」と聞いてみた。大慌てで否定する康介をよそに、修斗さんは元気に「そうだよ」なんて返事をするもんだから、康介はまた真っ赤になって怒ってしまった。
康介のあからさまに恥ずかしがっている様子が面白い。
「あの公園のドーナツ、うまかった?」
周さんが修斗さんに聞いてるのを見て、康介は口をパクパクして更に焦ってる。僕らに見られていたなんてきっと夢にも思っていなかったんだろうな。
でもあんまり揶揄うのも可哀想だからこの辺でおしまいにしてあげないと…… と、そう思った途端に周さんが僕の腕を取り立ち上がるからびっくりして足元がフラついてしまった。
「え? 周さん? ……どうしたんですか?」
「いや、俺ら次で降りるから」
え? 降りる駅まだ先だよ……? 康介も修斗さんも、え? って顔をしてるし。
「竜太の誕生日終わるまで一緒にいるし、これからめいいっぱい俺に甘えるんだもんな? 竜太 」
ちょっと待って! そんな言い方恥ずかしいから! ……めいいっぱい甘えるけどさ。
修斗さんに「はいはいごちそうさま!」と揶揄われながら僕らは電車を降りた。
夜道を歩く。
人もまばら……
周さんは僕の肩を抱いてくれている。電車を降りてからずっと黙ったままだ。僕はここの駅で降りたことがないから、道なんて全然知らない。
どこに行くんだろう?
なんだか久しぶりだし、周さんに肩を抱かれてドキドキしてきちゃった。先程から密着して歩いているから、僕がドキドキしてるのが伝わっちゃうかも……
チラッと周さんを見上げると、こっちを見ていて更にドキっとしてしまう。
見られていて恥ずかしい。
「竜太…そんな顔して見るなよ。堪らなくなる……」
周さん、そんな風に見つめられたら僕だってもう堪らないよ……
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