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Kiss?しない
屋上でお昼ご飯。俺の両隣には竜と修斗さん。
竜は明日やっと周さんに会えるからと言って、朝からすこぶる機嫌がいい。今も一人でにこにこしている。竜がこんな風ににこにこしているのもまた珍しいかもしれない。見てるこっちまで顔が綻んでしまいそうだった。
修斗さんはというと、そんな竜を見ながら俺の方をチラチラと見ている。
「いいねぇ、デート。俺さ……明日はとっても暇なんだよね」
「………… 」
言いたいことはわかってる。暇だから遊べ! と言いたいんだろう。でも俺はあえて聞こえないふりをする。だって休みの日までこの人に振り回されんのは御免だから……
それに俺、あんな事したのに。
修斗さんは何事もなかったかのように振舞う。何で俺だけ気まずくしてなきゃいけないんだよ。何で修斗さんはあの事にこれっぽっちも触れないんだよ。
もう、わけわかんねえ……
一人悶々としていると、突然視界に修斗さんが現れてびっくりした。
「おわっ! 何ですか??」
何この人! この距離の近さ、真ん前に顔突き出してキスされるのかと思ってしまった。
「ねぇ……康介君、俺の話聞いてる?」
は? 聞いてるけど聞いてないんだよ!
「なに? 康介君怒ってるの? やだ笑ってよ」
「………… 」
やっぱりこのあいだのアレは、この人の中では無かったことになってるのかな? 気にしてるのは俺だけなのかな……そう思ったらちょっと複雑な気持ちになった。
「……別に怒ってねえし!……てか修斗さん、顔が近いんです! キスされるかと思っただけです!」
思わず勢いで余計なことまで言ってしまった。
「あれ? 康介君、俺とキスしたかった? 気がつかなくてゴメンね」
もう、まただよ。修斗さんはすぐに俺のことを揶揄うから嫌なんだ。話はそれで終わらず、四つん這いになった修斗さんはズイズイと俺に近付いてくる。
「……いいよ、キスする?」
だから!
「もう! 揶揄うなって言ってるでしょうが! もう! 俺、教室戻ります!」
後ろでケタケタと笑う修斗さんの声を聞きながら、俺は先に教室に戻った。
勘弁してくれ……顔が熱い。
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