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小峰

俺は逃げるように屋上からの階段を降りる。 廊下に出たところで、誰かとぶつかりそうになった。 「お! スンマセンっ!」 適当に謝りさっさと通り過ぎようとしたら、そいつに強く腕を掴まれてしまった。 何かと思い振り返るとそこに立っていたのは小峰だった。一瞬にしてカーッと血が上り、頭にきてその手を振り払う。 「放せよ! 小峰、お前修斗さんに何した? なあ!」 逆に俺が小峰の腕を掴んで引き寄せる。小峰はそんな俺に怯えたようにぶんぶんと首を振った。 「離して! 康介君、誤解だよ! 僕は何もやってない!……信じてよ、お願い、本当なんだ」 泣きそうな顔で俺を見上げる小峰に、とりあえず掴んでいた腕を離してやった。 「だってお前……周さんにぶっ飛ばされてたじゃん! お前がやったんだろ? 」 あの時の状況はどう見たって小峰も関わってるはずなんだ。でも小峰は「違う」と必死になって俺に訴えている。そしてとうとうその瞳から涙が溢れた。 「……ごめん、怒らないで。違うんだ……僕は谷中先輩を助けようとして……あのビデオカメラだって、床に落ちてたから拾っただけだ。それなのに……それなのに……誤解した橘先輩が僕を思いっきり殴って…… 」 両手で顔を覆い、泣きながら俺に無実を訴える小峰は小さく震えていた。 「それが本当なら、周さんにちゃんと説明して謝ってもらわなきゃ。誤解を解かなきゃ……」 「やめて! 橘先輩にはもう関わりたくない!……怖いから……もういいんだ」 俺に縋り付き、震えながらそう訴える小峰にこれ以上何も言えなかった。 確かにそうだ…… あんなに殴られたんだ。 ただでさえおっかないイメージの周さんだ。あんな風に誤解されて殴られたんならもう恐怖しかないよな。 「谷中先輩だって橘先輩だって、僕を悪者にして……でももういいんだ。ほっといて……」 俺の腕をキュッと掴んで小さく呟く。 「僕は康介君が信じてくれればそれでいい……ごめんね。話、聞いてくれてありがとう」 小峰はそう言うと、少し辛そうに笑って走っていった。 走り去る小峰の後ろ姿を眺めながら、あんなに小柄で女の子みたいな小峰があんな事するなんて、やっぱりおかしいよな……なんて俺は思ってしまった。

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