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目覚めのでこチューからのデート
休みの日は、目覚ましも必要ない。
寝たいだけ寝て、のんびりするんだ。一日中寝てたっていいんだ。
ぐうたら出来る幸せ──
「んんっ……っと、今何時だ?」
寝起きでまだしっかりと目が開かない俺は、ぽんぽんとまわりを叩きながら枕元にあったはずの携帯を探す。ふと額に触れた物に何故だかドキッとして目を開くと、俺の顔を覗き込む修斗さんと目が合った。
へ?
「おはよう! 康介君、出かけるよ!」
へ??
理解が追いつかない。
俺の部屋に修斗さんがいるのもわけわかんねえし、何より今の額の感触……
「……修斗さん? 今、俺になにした……」
俺は自分の額に手を置いて、頭の中を整理する。ここは俺の部屋。今日は学校は休み。そして目の前に修斗さん。寝ぼけてたけどあのおデコの感触は……キス?
チューした? へ? なんで? そんでもって今から出かける?
は??
「康介君さ、おデコにチュッてやると、ぐぐーってここにシワ寄って面白いんだもん。もっかいやったら今度は寝ながらニヤニヤしちゃって……何の夢見てたの? エッチなの? 」
「………… 」
そう言いながら修斗さんは実に楽しそうに俺の眉間を指で突っついた。
やっぱりこの人、俺のおデコにキスしたの? 何で?
てかそんな事より……
「修斗さん! 何やってんすか? ここ俺の部屋! どうやって入ったの??」
ベッドから起き上がりながら俺は修斗さんに聞く。修斗さんはにこにこしながら「陽介さんが入れてくれた」と答えた。
兄貴……何してくれてんだよ。
「ほらいいからさ、康介君出かけるよ! 今日は俺と一日デートして」
この人、どうせ断ったって言うこと聞かないよな。ここまで勝手に来ちまってんだもん。
俺は目覚めて三分で全てを諦めた──
「俺、シャワー浴びてくるから少し待っててください」
そう言うと、修斗さんは本棚の漫画を物色しながら「康介君 汗くさいもんね」と笑う。
……どうせ臭いですよ。
ちょっとムッとしながら階段を下り、風呂場へ行く途中で出かけ間際の兄貴と目が合った。
「お前らやっぱり付き合ってたんだな」
ニヤける兄貴に怒りで言葉も出ない。どうせ「違う」って言っても信じねえんだ。俺は兄貴を無視して風呂場に向かった。
あまり待たせるのも悪いので、さっと簡単に湯を浴びて部屋に戻る。修斗さんは俺のベッドの上で膝を抱えちょこんと座って待っていてくれた。
……なんか可愛い。
修斗さん、いつもお洒落なんだよな。さて、俺は何を着ようかな…… そもそも一緒に出かけるってどこに行くんだ? デート? 男二人でデートって、全くイメージ湧かねえんだけど。あ、デートって言うからイメージ湧かないんだ。友達と遊びに行くって思えばいいんじゃん。 ジッと修斗さんに見られてるのにも気付かず、俺は色々考えながら着ていく服を選んだ。
スッと横から手が伸び、俺のお気に入りの服を取る修斗さん。
「俺、康介君のこの服好き! これ着て」
笑顔でそう言われて、ちょっと嬉しかった。
色々迷ったけど、結局修斗さんチョイスの服を着て俺たちは家を出た。
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