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映画

公園で二人でドーナツを食べ、康介君の機嫌も直ったところで映画館に向かった。 話してみたら、康介君も観たかった映画らしくてちょっと嬉しい。趣味や好みが似ているとそれだけで楽しかったりするよね。 ジュースとポップコーンを買って席に着く。思ったほど混んでなくていい席も取れた。さっきは康介君が少し怒っちゃったけど、それ以外はスケジュール通りに事が運んで俺は満足だった。 映画が始まり、程なくして横からスースーと寝息が聞こえてくる。 おいおい……康介君、寝てるじゃん。 俺もコレ観たかったんです! って言ってなかったっけ? あまりの寝付きの良さに思わず一人で吹き出してしまった。 まあイビキでもかき始めたら起こせばいいか。 俺らが観ているのは結構激しいアクション映画だ。 ボンボンと激しい爆発、ダダダダ、と銃撃戦。そんな爆音にも負けずに安らかな顔をして寝ているのがなかなかに面白かった。挙げ句の果てには俺の肩に頭を乗っけてスースー寝ている始末。爆睡していて頭重てえ……って思ったけど、あまりに気持ち良さそうに寝ているから可愛く思えてしまい何も言えなかった。 映画が終わりエンドロールが流れる中、俺は肩に乗った康介君の頭に自分の頭をコツンと寄せる。 すぐにビクッと康介君が目を覚ましそのまま俺の顔を見るもんだから、お互いの顔が超接近。あっという間に真っ赤になって焦っている康介君に、俺はまた面白くって笑ってしまった。 「……俺、寝てました??」 寝てました? って、かなり初っ端から爆睡だったでしょうよ君。 「康介君、ほとんど始めから寝てたじゃん!」 康介君のすっとぼけ発言に笑うのを堪えるのが大変。結局我慢出来ずに大笑い。康介君はムッとするけどこれって俺、悪く無いよね? 映画館を出てからも、しばらくの間その事を思い出しては俺は笑っていた。 「ちょっと……そんなに笑わなくたって! 昨日寝たの遅かったんですよ。今日一緒に出かけるの知ってればもっと早く寝たのに……もう! 笑わないでよ……すみませんでした」 「だってさ、観たかった映画なんでしょ? その割に爆睡だったから可笑しくって」 ほんと楽しい── でもこのくらいにしといてあげないと、そろそろ康介君、拗ねちゃうかな。 そんなことを考えていたら、突然目の前の店から飛び出してくる竜太君に驚いてしまった。 俺らに気付かない竜太君はこちらに向かって歩いてくる。 「あれ! 竜太君? ……って、おい!待ってよ」 竜太君、珍しく怒った顔をして俺らを無視して走り去っていった。今日は周と誕生日デートのはず。それなのにあんなに怒った顔をして普通じゃない。何かあったのかと慌てて追いかけようと竜太君を目で追った。 竜太君、足遅っ…… びっくりする程足の遅い竜太君にすぐに追いつき、俺らは何があったのかと話しかけた。 今日は竜太君にとって待ちに待った特別な日だ。あんなに寂しい思いをして我慢して、やっと迎えた今日だって言うのに、あんなに嬉しそうにしていたのに……周は一体なにやってんだよ! 事情が分からなくとも周に対して腹が立ってくる。そして詳しく話を聞くと、周の元カノが登場したから竜太君は帰ると言っている。 元カノ? 訳がわからなかった。周の元カノってどういうことだ? 少し考え込んでいると背後から周の呼ぶ声が聞こえてきた。 「竜太ーーー! 」 すぐに周の声が少しおかしいのに気がつく。振り返り周の姿を確認すると、手前にいる女に目を奪われた。 ……マジかよ! あいつに康介君を見られるのは嫌だ! 元カノってアイツのことかよ! とんだ爆弾だ! 「康介君! 行くよ!」 俺は慌てて康介君の手をとり、走り出した。竜太君は凪沙が元カノだと思ったのか…… あんな奴、元カノなんかじゃないって! 俺はそれだけ竜太君に伝えて、康介君とこの場から逃げ出した。

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