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サプライズ

カラオケ店内── 修斗さんと個室に入るとあの時の大喧嘩を思い出してしまった。あの時あんなに修斗さんが怒った理由が未だにちょっとわからない。なんであんなに怒ったんだろう…… 何を歌おうかな、と楽しそうに曲を選んでいる修斗さんの顔を見る。聞いてもいいかな? でもまたあの時のことをぶり返すこともないか…… 「………… 」 「康介君は何歌う? ……歌わない?」 実はあまりカラオケは好きじゃない。普段カラオケに行くのは修斗さんや周さんがめっちゃ上手いから、それを聞きたいがために一緒に行っているようなもの。 「俺、下手だから……」 クスッと笑って修斗さんが俺の顔を見る。 「……てかさ、さっきから康介君、俺になにか言いたそうだよね? なに?」 なんでもお見通しって顔してる。結局いつもこうなんだ。 「修斗さん……聞いてもいい?」 修斗さんは「ん?」って小首を傾げて俺を見つめる。……このちょこっと首を傾げる仕草、癖なのかな。事あるごとにこれをやられるとなぜだか胸がキュンっとする。男相手なのにドキッとしてしまう。 俺おかしいな…… 「こないだ、なんであんなに俺の事……怒ったんですか?」 思い切って聞いてみた。だって、本当にわからなかったから。 「えー、言ったじゃん。俺のヤキモチだってば」 それは確かに聞いたけど……八つ当たりだとか、ヤキモチだとか言っていた。でも一体何で? 「えっと、それがよくわからないんだけど……」 「もう! わからない?? あの時康介君が女と楽しそうに話してるのを見てイラッとしちゃったの! ……それに康介君のほっぺにキスしてるように見えたから、離れろ! って思ったの!」 恥ずかしそうにそういう修斗さん。でも待って? キス? 「キスなんて俺、されてないっすよ?」 修斗さん、顔真っ赤だ。 「わかってるよ! あの時はそう見えちゃったの! それで気が付いたら腹が立ってオシボリを投げてたの! もうゴメンね! 俺が悪かったってば……もうこの話おしまいっ!」 修斗さん、言うだけ言ってそっぽ向いちゃったけど耳まで真っ赤だ。 え? え?? 修斗さんがあんなに怒ってたのって……嘘だろ? 俺の事……いや、まさかな。修斗さんの反応にちょっとドギマギしてしまう。そういうのって、ヤキモチって、そういうことじゃねえの? そっぽを向きながら何かゴソゴソやってる修斗さん。 何やってんだ? と気付いた瞬間、このあいだのオシボリのように何かを俺に投げつけてきた。 「……ほらっ!」 びっくりして反射的にそれを受け取り見てみると、俺の手の中にあるのは小さな紙袋だった。 「へ? これは……何ですか?」 修斗さんは目を泳がせながら、ひとこと「開けてみろ」と呟いた。 袋を開けて中を覗くと、かっこいいピアスが入ってた。 シルバーのベースにブラックストーンが埋め込まれてるシンプルなピアス…… え! マジか! これ俺が好きなブランドのピアスじゃん! 「え? え? ……これって?」 真っ赤な顔のままの修斗さんが、俺に向かって「プレゼント」だと言っている。 「少し早いけどさ、康介君明後日が誕生日でしょ? ……竜太君の誕生日の二日後だって聞いたからさ……」 「………… 」 なんなの? この人ってば! 赤い顔して俺に向かってはにかんで……可愛すぎる! 「修斗さん! ありがとう!……俺凄え嬉しい!」 どうしよう。 俺、やっぱり修斗さん、大好きだ── あ、プレゼントくれたから、ってわけじゃなくてね……

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