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羨ましい
康介君がトイレに立って戻ってくると、俺があげたピアスをつけてくれてた。
やっぱり思った通り似合ってるし、何より今それをつけてくれたのがすごい嬉しかった。
実はさ、康介君には言ってないけど俺とお揃い。プレゼントは何がいいかな? って考えた時、ふと同じものを身に付けたいって思ってしまって、ついついお揃いを買ってしまった。
康介君気づいてないよな……
なんだか思考が女っぽくて恥ずかしい。
康介君は照れ臭いのか食事して体温があがったのか、赤い顔をしている。どうしたって照れてるように見えるその顔が可愛くて、からかいたくなるのを俺はグッと堪えた。
帰りの電車──
客もまばらなその空間に見知った顔が見えた。
「……あ、康介君あれ見て 」
俺は隣に座る康介君にそう囁き、その人物に近づいて行った。
シートに二人で並んで座り、腕を組みどっしりと座る周の肩にもたれるように竜太君が気持ちよさそうに眠っていた。
「竜、可愛い寝顔…… 」
そう言った康介君の声に周が気が付き、「起こすなよ!」と睨んだ。
「今帰りなの? さっきはありがとな周。まさか凪沙に会うとは思わなかったよ」
周の声に気がつかなかったら俺は凪沙と鉢合わせてた……最悪俺はどうでもいいんだけど、康介君に会わさずに済んだのがありがたかった。
竜太君が俺たちの声に気付いたのか、すぐに起きてしまい顔をあげる。
「あ! お姫様起きた」
そう言って少しからかう。なんで? という顔をして、竜太君は俺と康介君を交互に見た。心なしか少し瞼が腫れぼったく見え、その顔を見た康介君がすかさず心配そうに声をかけた。
「なあ竜、目が腫れてない? なんか赤いし……周さんに泣かされたの?」
先ほどの竜太君の様子から、喧嘩をしたのはわかっていたからか、康介君は怖い顔をして周を睨んだ。今の二人を見て仲直りしてるのなんて一目瞭然なのに心配なんだろうな。まるで康介君は竜太君のお兄さんみたい。
周もそんな康介君にちゃんと説明をして仲直り出来てることを伝えている。時折竜太君の顔を優しい表情で見つめているのを見て、周もそんな顔するんだな……と微笑ましく思った。
調子に乗った周が少し惚気て話をするのを竜太君が「恥ずかしいから」と言って周を叩く。
なんだろう……
そんな様子を見ていて、ちょっと羨ましかった。
「修斗さんたちも今日はデートだったんですか?」
竜太君にそう聞かれたから俺は「そうだ」と素直に答える。でも康介君は大慌てで否定した。
そんな全力で否定しなくてもいいだろ……
照れ隠しであんなになっているのはわかるけど、やっぱりちょっと嫌だと思ってしまった。
周にドーナツうまかったか? なんて聞かれて、あの時の様子を見られていたんだとわかった時の康介君の顔。真っ赤になって、面白すぎ。恥ずかしさがキャパオーバーしたのか、それからの康介君はひたすら無言を貫いていた。
しばらくすると、目的の駅の手前で周と竜太君は降りていった。
康介君は不思議そうな顔をして「竜太も周さんも、最寄駅まだ先っすよね?」なんて聞くもんだから「ラブホにでも行くんだろ?」と教えてやったらまた真っ赤になって黙ってしまった。
康介君……可愛いな。
でも、駅に着きバイバイしようとしたらダメだと言われ、康介君は俺を家まで送ってくれた。 男らしいというか、まだ俺のこと心配してくれてんのかな。もう大丈夫なのに、そんな康介君の気持ちが嬉しくて擽ったくもあった。
今日は一日凄く楽しかった。
康介君も楽しかったと思ってくれてるといいな。
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