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誕生日デート明けの月曜日
周さんのサプライズなデートで初めてラブホテルに行った。
沢山の幸せのお返しにいっぱい愛してあげようとしたけど、やっぱり周さんにメロメロに愛されてしまった。
次の日チェックアウトしてから二人で喫茶店で軽く朝食を済ませて、周さんの家へ寄った。周さんの家には出勤前の雅さんが支度をしている最中で、僕を見るなり「お誕生日おめでとう!」と言ってくれ、おまけにプチケーキまで用意してくれていた。どうやらこれも僕に対するサプライズだったらしい。
びっくりして僕はまた泣きそうになってしまい、やっぱり「泣き虫」だと周さんに呆れられた。そして雅さんにお礼を言うと、可愛いと言って雅さんにも抱きしめられた。
素敵な誕生日を過ごす事ができて本当に嬉しく思う。
周さん、ありがとう──
月曜日、教室ではやけに機嫌のいい康介と、これまた同じくご機嫌の志音がお喋りをしていた。
志音は最近ちゃんと学校に来てるけど、気持ちの浮き沈みが激しかったように見えたから少し心配だったんだ。やっぱり志音は特殊なお仕事をしているし、ストレスだって溜まるのかな?
そんな志音が僕に気付き、ニコニコしながら手招きをする。
「おはよ、康介志音」
声をかけるとすぐに志音が僕に聞いてきた。
「ねえ、康介君のこのピアスってさ、修斗さんのと同じだよね?」
志音にそう言われ、僕は赤い顔をした康介の耳をジッと見る。
あ……!
「うん、これって修斗さんライブの時よくしてるやつだよね」
黒くてちょっと存在感のあるピアス。確かに見た事があった。でも細かいところまでじっくり見たことはなかったから絶対かと問われると自信はない。それでも真っ赤な顔をしている康介を見れば、修斗さんとお揃いなのだと一目瞭然だった。
「志音、よく気づいたね!」
「当たり前でしょ、俺モデルだよ? 常にみんなのファッションチェックしてるもん。俺の中では修斗さんと康介君は相当なオシャレさんだよ」
得意そうに志音が笑った。
「康介、修斗さんからもらったの?……あ! そうだよ、康介今日お誕生日だったよね。おめでとう!」
志音も康介におめでとうと言い、肩を叩く。
「あ……いや、お揃いとかそういうんじゃねーから……てか、俺、修斗さんからこれがお揃いだって言われてもいねえし」
康介ったら赤い顔してしどろもどろ……
「修斗さんから誕生日プレゼントでもらったんでしょ? だよね? 土曜日デートしてたもんね」
僕がこう言うと、ますます真っ赤になって康介は慌ててしまった。こういう反応をするのをわかっていてわざと言ってるところもあるんだけどね、揶揄うのもちょっと面白いんだ。
「だ、だから! デートじゃないでしょ。男同士で遊んだだけだって……」
志音も段々と康介の反応が面白くなってきたらしく、口を挟んでくる。
「でもさ! お揃いの物って好きな人と一緒に持つと安心感が増すよね? 付き合ったらそういう物、持ちたいって思うもん」
もう康介は何も言い返せずに口だけアワアワ動かしている。そしてブツブツと「付き合ってねえし……」と言っている。面白いけど段々可哀想になってきた。
「てかさ、竜太君もなにそれ? 見慣れないのつけてるじゃん。これカッコいいね、どうしたの?」
急に志音が康介じゃなくて僕の方を見て腕を掴む。志音が指摘しているのは勿論周さんからプレゼントしてもらったお揃いのブレスだ。
だめだ…… 思い出してニヤケちゃう。
「ちょっとなに? 竜太君、にやけちゃって。もしかして周さんからのプレゼント?」
すぐバレちゃった。
「うん、周さんと色違いなんだ。誕生日だからくれたの」
嬉しくて嬉しくて、また手首のブレスを摩る僕を見て志音が大きく溜息をついた。
「なんだよみんなでお揃い……いいなぁ。俺もお揃いしたいな……」
志音がそう呟くと、すかさず康介が突っ込んだ。
「志音もお揃いする誰かさんがいるんだ!」
「志音もって、'も' って言ったね? てことはさ、康介君もラブな人がいるんだね! そうだよね、修斗さんでしょ? かっこいいもんね。お似合いだよ」
さっきのお返しとばかりに康介は志音に口撃するも、あっさりと反撃されまた黙ってしまった。
二人のやりとりに笑っていると、ふと視線を感じた。廊下の方を見ると、こちらの方を見ている小峰君の姿があった。
「康介、あそこ……」
康介に言うと「あ…」と呟き立ち上がった。
「ちょっと行ってくる……」
深妙な顔をしてそう言って、康介は小峰君の方へ歩き出す。廊下で何かを話し、そして二人はどこかへ歩いて行ってしまった。
康介? どこ行くの?
もうじき授業始まるよ……
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