227 / 432
火曜日
火曜日──
昼休み、僕は一人で屋上にいる。もともとは一人でここでお弁当を食べていたけど…… 周さんと知り合ってからは常に誰かしらと一緒だったから、久々の一人はちょっと寂しい。
お弁当も食べ終えそうなその時、屋上の入り口に人影が見えた。シルエットですぐにわかる。周さんだ。
周さんは僕を見つけると早足で来てくれた。
「どうした? 今日は一人なのか? 康介は?」
周さんが僕の横にぴったりとくっ付いて座り、そう言いながら僕の膝をすりすりと摩った。
「うん、今日はお休みみたい……康介、学校来てないんです」
周さんは自分から聞いておきながらあんまり興味がなさそう。
「ふうん……康介が休むの珍しいな。バカは風邪ひかねえんじゃないの?」
確かに康介が学校休むのなんて滅多にない。どうしたんだろう……と、少し気になってるのが本当のところ。
「修斗さんは? 今日は一緒じゃないんですか?」
周さんも一人で屋上に来るのも珍しかった。周さんも常に修斗さんと一緒のイメージがあったから。
「修斗は朝から偏頭痛だってさ。保健室で寝てるって」
修斗さんまで……康介、修斗さんと喧嘩したわけじゃないよね?
何も連絡はなかったけど、ただ単に体調崩して休んでるだけだよね? とりあえず学校帰りに康介の家に寄ってみよう。
放課後、僕は部活を終えて廊下を歩く。下駄箱に行く途中に保健室があるから、修斗さんがいるかもしれないと思って覗いてみた。
「お? 竜太くん、今帰り?」
保健医の高坂先生に声をかけられ、中を覗くと志音の姿。
「あ、志音いたんだ。まだ帰らないの?」
そう言いながら、僕も保健室へ入った。
「ほらほら、用がないなら君たち早く帰りなさいよ」
相変わらず怠そうに高坂先生がそう言い、コーヒーカップを口に運ぶ。修斗さんもいないようだし、先生の言う通り用もないから帰ろうと志音を誘った。
「志音、一緒に帰ろう」
僕が志音に声をかけたら、カーテンの奥から声が聞こえた。
「あれ? 竜太君?」
そう言いながら出てきたのは、眠そうな顔をした修斗さんだった。なんだいたんだ……静かだから誰もいないのかと思った。
「先生、いちゃいちゃ終わったの?」
修斗さんが高坂先生を見ながらニヤニヤと笑ってる。
「こら! 変な事言わないの。いちゃいちゃなんてしてませんよ? それより修斗くん、具合どう? 頭痛治った?」
顔の前で手を振りながら、高坂先生が心配そうに修斗さんに声をかけた。
「ん、休んだから大丈夫。ありがと先生」
修斗さんはそう言って笑うと、今度は真面目な顔をして僕の方を見る。
「なぁ、竜太君。康介君どうしてる? なんか連絡が取れないんだよね。メール送っても返事こねーし。俺また何か怒らせちゃったかな…… 」
すごく心配そうな顔……
康介が怒ってるなんて絶対ないと思う。昨日だってあんなに嬉しそうにしてたじゃん。
康介、なにしてるんだろう?
家にいるよね? 学校休んでるだけだよね?
……でもなんだろう、このモヤッとした感じ。
いつもならメールの返事なんてすぐ返すのに、何で修斗さんに返事してないの?
どうしようもない、なんだかよくわからない不安が僕を襲った。
ともだちにシェアしよう!