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火曜日

火曜日── 昼休み、僕は一人で屋上にいる。もともとは一人でここでお弁当を食べていたけど…… 周さんと知り合ってからは常に誰かしらと一緒だったから、久々の一人はちょっと寂しい。 お弁当も食べ終えそうなその時、屋上の入り口に人影が見えた。シルエットですぐにわかる。周さんだ。 周さんは僕を見つけると早足で来てくれた。 「どうした? 今日は一人なのか? 康介は?」 周さんが僕の横にぴったりとくっ付いて座り、そう言いながら僕の膝をすりすりと摩った。 「うん、今日はお休みみたい……康介、学校来てないんです」 周さんは自分から聞いておきながらあんまり興味がなさそう。 「ふうん……康介が休むの珍しいな。バカは風邪ひかねえんじゃないの?」 確かに康介が学校休むのなんて滅多にない。どうしたんだろう……と、少し気になってるのが本当のところ。 「修斗さんは? 今日は一緒じゃないんですか?」 周さんも一人で屋上に来るのも珍しかった。周さんも常に修斗さんと一緒のイメージがあったから。 「修斗は朝から偏頭痛だってさ。保健室で寝てるって」 修斗さんまで……康介、修斗さんと喧嘩したわけじゃないよね? 何も連絡はなかったけど、ただ単に体調崩して休んでるだけだよね? とりあえず学校帰りに康介の家に寄ってみよう。 放課後、僕は部活を終えて廊下を歩く。下駄箱に行く途中に保健室があるから、修斗さんがいるかもしれないと思って覗いてみた。 「お? 竜太くん、今帰り?」 保健医の高坂先生に声をかけられ、中を覗くと志音の姿。 「あ、志音いたんだ。まだ帰らないの?」 そう言いながら、僕も保健室へ入った。 「ほらほら、用がないなら君たち早く帰りなさいよ」 相変わらず怠そうに高坂先生がそう言い、コーヒーカップを口に運ぶ。修斗さんもいないようだし、先生の言う通り用もないから帰ろうと志音を誘った。 「志音、一緒に帰ろう」 僕が志音に声をかけたら、カーテンの奥から声が聞こえた。 「あれ? 竜太君?」 そう言いながら出てきたのは、眠そうな顔をした修斗さんだった。なんだいたんだ……静かだから誰もいないのかと思った。 「先生、いちゃいちゃ終わったの?」 修斗さんが高坂先生を見ながらニヤニヤと笑ってる。 「こら! 変な事言わないの。いちゃいちゃなんてしてませんよ? それより修斗くん、具合どう? 頭痛治った?」 顔の前で手を振りながら、高坂先生が心配そうに修斗さんに声をかけた。 「ん、休んだから大丈夫。ありがと先生」 修斗さんはそう言って笑うと、今度は真面目な顔をして僕の方を見る。 「なぁ、竜太君。康介君どうしてる? なんか連絡が取れないんだよね。メール送っても返事こねーし。俺また何か怒らせちゃったかな…… 」 すごく心配そうな顔…… 康介が怒ってるなんて絶対ないと思う。昨日だってあんなに嬉しそうにしてたじゃん。 康介、なにしてるんだろう? 家にいるよね? 学校休んでるだけだよね? ……でもなんだろう、このモヤッとした感じ。 いつもならメールの返事なんてすぐ返すのに、何で修斗さんに返事してないの? どうしようもない、なんだかよくわからない不安が僕を襲った。

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