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もう少し一緒にいたい

買い物したいって言うから、てっきり小峰が自分のものを買うのかと思った。 なんで俺? 「康介君、欲しいものは何?」 いや、俺は何もいらないし…… いくら「いらない」と言っても、遠慮するなとしつこい。 参ったな…… 「あ、そうだ! ねぇ……僕、康介君と何かお揃いの物が欲しいんだけど、いい?」 いやいや、それはちょっと…… 「……ごめん、それはちょっと無理だわ」 そう言うと、小峰は一気に悲しそうな顔をした。そんな顔すんなよ。しょーがねえじゃん。 「ごめんな。小峰に何か買ってもらうのもお揃いの物を持つのも、出来ないよ」 こういうのは好きな人にしてもらうとあんなにも嬉しいのに、そうじゃないと困るだけだとわかった。 「そうだよね、ごめんね。康介君優しいから、ちょっと調子に乗っちゃった……」 ごめんな……俺は修斗さんが好きだから。こういうのは、ちょっと嫌だ。 しばらくウインドーショッピングを楽しんでいた。ふとポケットの携帯が震え、メッセージが入ったのがわかった。それを確認しようとすると小峰に携帯を取り上げられてしまった。 「ん? なんだよ、返せよ」 「今は僕とデートしてくれてるんだよね? 携帯はやめて! しまっておいて……」 小峰はぷくっと頬を膨らませて怒りながら携帯を返してくれた。 なんだよ…… メールチェックくらいいいじゃんか。 不満に思ったけど、もうこれで最後なんだと小峰のことを考えたら文句も言い出せず、俺は携帯の画面を見る事なくバッグにしまった。 夕方になり日も沈んできた。そろそろ帰るかな? と思っていたら小峰がおかしな事を言い出した。 「康介君はお酒は飲める方?」 ニコニコしながら俺に聞く。いや、飲めなくもないけどさ…… 「うん……飲むけど、なんで?」 「じゃあさ、これから一緒ご飯食べに行こう」 それって酒飲みながら飯食おうってコト? いやいや、俺ら制服だし何言ってんのこいつ。普通に無理だよね? 「小峰さ、飲み行きたいのはわからないでもないけど今日は無理でしょ? 俺たち制服姿だよ? せいぜいファミレスで晩飯だな」 俺がそう言うと、小峰は嬉しそうに首を振った。 「大丈夫だよ。僕の知り合いがお店やっててね、羽目を外さなければ……って約束ならお酒出してくれるの。内緒だよ。個室あるから周りも気にならないし、……僕、もう少し康介君と話してたい」 だめ? と小峰は上目遣いで俺を見る。 まあ、もう少しくらいいいかな…… 後から皆んなにあんなに心配される事になるなんて微塵も思わず、俺は呑気に小峰について行ってしまった。

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