243 / 432

マジ凹む

志音や高坂先生も探してくれた。小峰が康介君を連れていったという店の情報も教えてくれた。 急いでその場所に向かう途中に俺は康介君の後ろ姿を見つけた。 絶対見間違えなんかじゃない。確かに向こうに見えるあの後ろ姿は康介君だった。やっと見つけた安堵感と、本当に無事なのかという不安感で膝が震えてしまった。 でも早くこの手で康介君を捕まえたくて俺は必死に走り追いついたんだ。 「よかった! 見つけた! 康介君大丈夫…… 」 後ろから抱きつくように捕まえ、そう言って話しかけると康介君は慌てて俺から腕を離した。 必死の形相…… 凄い力で俺から逃れ、恐怖の色を浮かべたその瞳からは涙が溢れた。逃げるように、でもふらつくのかヨロヨロしながら康介君は俺から離れていく。 ショックだった。 無言の康介君は、明らかに俺を避けた。 それを確信した途端に俺は全身から力が抜け、その場にへたり込んでしまった。 どうして…… 何があったんだ? 見た所、外傷もないし服も乱れていない。でも、あんなに怯えた表情で俺を見て拒絶するなんて。 小峰に何かされたのか? 色んなことが頭を過ぎり言葉が出ない。とにかく康介君が俺のことを避けたことがショックで呆然としてしまった。 俺から離れたところで高坂先生が康介君と何かを話してる。竜太君が康介君に近付き寄り添っている。高坂先生は「ひとまず帰ろう」と言いながら俺の方を見た。 なに? なんで? 俺は? 何が何だかわからず、その光景をぼんやりと眺めていると志音が俺に肩を貸してくれ立たせてくれた。 「大丈夫? 歩ける?」 志音に聞かれ、黙って頷く。「修斗くん? 大丈夫?」と、 先生がそんな事を俺に聞くから「大丈夫なわけないだろ!」と感情的になってしまった。 「……先生、康介君と何話してたの?」 さっき、怯える康介君と何か話してたよな。俺には言えなくて、先生には言えた事…… 「なんか様子がおかしかったから、話したくない? って聞いたんだよ。話したくないって言うから、竜太くんになら話せるよね? って聞いてみた……竜太くんは小さい頃からの幼馴染だろ? そしたら頷くから、あとは竜太くんに任せることにしたんだよ」 そっか…… 竜太君になら話せるか。 よかった…… でも、それはそれで何か寂しいもんだな。こんなに心配で押し潰されるかと思ったのに… 俺、康介君に拒絶されたんだよな。 先程の康介君の悲痛な表情を思いだし、また俺は落ち込んだ。 そんな俺の心の内を察したのか、先生は俺の頭を優しく撫でながら「大丈夫、大丈夫」と言ってくれた。 家に帰って、ベッドに横になる。そのタイミングで周から電話が入った。 「……ん? 何?」 適当に電話に出ると、康介君の事で物凄い心配した周が俺に知らせてくれた。 「康介見つかったってよ!」 ははっ……もう知ってるって。 ありがとな、周。 周の声を聞いたら泣けてきた。 「……周……ありがとな」 礼を言うと、すかさず周に怒鳴られてしまった。 「なんだよ! なんでお前泣いてんだよ! 」 「………… 」 なんでいつも周はいちいち怒るんだ? でも心配してくれてるのが痛いほどわかる。不器用だけど優しいんだ周は。 「ありがと周。俺 凄い心配でさ、ほんとに死ぬかと思うくらい心配だったのにさ、康介君見つかって嬉しかったのに……拒絶されちゃってショックでダメだわ……マジ凹む。みっともねえな俺。今はちょっとダメだわ……ほっといて」 素直に周にそう愚痴ると、周は俺に力強く言い放った。 「修斗はちっともみっともなくねえぞ! そんな事で凹むなよ! 康介見つかってよかったじゃん!無事だったんだろ? 喜べ! 明日また学校でな!」 そう言って一方的に電話は切れた。 周らしいや…… 周と喋って少しスッキリした。 そうだな。見つかって何よりだ。康介君が話したくなるまで俺が待てばいいんだ。

ともだちにシェアしよう!