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秘密の場所

朝が来た……学校、行きたくねえ。 修斗さんと大喧嘩した時以上に今日は学校に行きたくなかった。 でも竜にも周さんにも、修斗さんとちゃんと話すように言われてしまった。 うん……それは俺も話さないとって思ってはいるんだけど。 でも怖い── 『小峰は俺を襲った奴だよ? 何でデートなんてしちゃってんの? 最低だな康介君』 修斗さんが言いそうなセリフが頭に浮かぶ。想像するだけで目に涙が溜まってくる。 せっかく仲良くなれたのに……俺が馬鹿なばっかりに、修斗さんを傷付けてしまった。俺は軽蔑されるんだ。 でも、心配かけてしまったことはちゃんと謝らなきゃいけない。わかってる! 頑張れ!俺! 今日は一日ぼんやりと過ごし、放課後屋上に行った。竜が修斗さんが屋上にいると教えてくれたから…… 話をするなら、謝るなら、早いほうがいい。 屋上の扉を開けて、恐る恐る周りを見てみると誰もいない。 なんだ……いないのか。 ホッとする気持ちと残念な気持ちが複雑に蠢く。溜息をつきながら俺はいつも座ってる場所へ腰掛けた。 修斗さんに何て言おう……明日は会えるかな? とりあえず先に謝る? 言い訳? 小峰と一緒にいた理由を話すべき? ひとり悶々と考えていると、誰かに肩を叩かれた。 「えっ……?」 いつの間にここにいたんだ? 「修斗さん……」 振り返ると目の前に静かに佇む修斗さんの姿があった。 何か言わなきゃ!と気が焦る。 胸のところからぞわぞわと嫌な感じがこみあげてくる。ドキドキしてうまく声が出せなかった。 「あ! ……えっと、あの…… 」 だめだ、喋れない…… どうにもならずワタワタしている俺を見て、修斗さんが俺を軽く抱きしめた。修斗さんの意外な行動に俺は驚き、何も出来ずに体が固まってしまった。 「ちょっと……こっち」 「??」 そう言って修斗さんは一旦体を離し、俺の手を引き歩き出した。 どこに行くんだろう? 修斗さんが向かうそっちは………壁? 驚いた! いつも座ってる場所の後ろは壁なんだけど、その裏にもスペースがあった。 「……ここ、俺の秘密の場所 」 そう言って修斗さんがはにかんで笑った。修斗さんの笑顔、久し振りに見たような気がする。それだけで嬉しくなってしまった。お陰で少し緊張がとけた気がした。 「多分 周も知らねえから……誰にも内緒だよ」 誰も知らない秘密の場所……俺にだけ教えてくれたんだ。 嬉しい── 壁に寄りかかり、狭いスペースに二人で並んで座る。修斗さんは黙って俺が話し出すのを待ってるんだろう。もう俺に向かって言葉を発することはなかった。 「心配かけてすみませんでした」 意を決した俺は、俯きながら修斗さんに謝った。 ドキドキが止まらない。 もう俺、いっぱいいっぱいだ…… どうしても顔をあげられなかった。

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