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コーヒーブレイク

周さんがコツコツと問題を解いてる。 康介は修斗さんから教えてもらいながらノートをとってる。 僕は圭さんと一緒にキッチンでお茶の用意のお手伝い。 あ……これってもしかして。 「圭さん? これって手作りですか?」 オーブンから出来立ての抹茶のパウンドケーキが取り出された。 「そうだよ、頭使って疲れた時には甘いものだよね。でも甘さ控えめなの……周はこれなら食べるから」 そうなんだ……確かに周さんは甘いもの、あんまり食べない。圭さんも周さんのこと詳しいんだな。 ちょっとやきもちを妬いてしまいそう。 「じゃ、そろそろ休憩にするし竜太君コーヒーお願い」 圭さんに言われ僕はコーヒーの準備をして、周さん達に声をかけた。 「少し休憩にしましょう」 リビングを見ると、既に周さんは後ろにひっくり返って寝そべっている。康介は妙に接近してくる修斗さんと真っ赤な顔をして攻防戦を繰り広げていた。 すっかり遊んじゃってるじゃん…… 「ほら、周さん起きて下さい! 」 そう言いながら、僕はコーヒーをテーブルに置いて周さんの隣に座りぴったりとくっついた。 ……やっと周さんに近づけた。 「つかれたぁ!! 竜太、褒めて!」 ゴロンと僕の膝に頭を乗せて膝枕状態で僕の顔を見る周さん。 ちょっと恥ずかしいけど、周さんの髪の毛を撫でてあげると嬉しそうに笑ってくれた。 横でケーキを持ってきた圭さんと目が合う。 「少しは理解できた? 周」 そう周さんに聞きながら、テーブルの上を片付ける。 「さすが圭さんだよ、 ばっちりわかった! 俺、頭よくなった気分」 周さんが笑ってる。横になったままの周さんの髪の毛を指で弄りながら、僕はちょっと羨ましかった。周さんと同じ歳なら僕だって勉強を教えてあげられたのにな…… 周さんがコーヒーを飲むのに起き上がる。 あーあ、膝枕おわっちゃった…… 「ん? どした? 竜太」 名残惜しそうな顔がわかっちゃったのか、周さんが不思議そうな顔をして僕を見た。 「なんでもないです」 そう言いながら、僕はまた周さんにくっ付くように座り直した。 修斗さんも康介も圭さんのケーキを絶賛しながら、仲良く並んで食べている。 「……なぁ、俺頑張ってるじゃん? 赤点免れたらさ、竜太ご褒美ちょうだいよ」 突然周さんが僕に向かって上目遣いでおねだりしてきた。 周さんの上目遣い……あんまり見たことのない表情にドキッとする。 なんだこれ! 周さん、可愛い! 恥ずかしくて顔が赤くなってしまった。 「はい! わかりました」 思わず即答してしまい、みんながキョトンと僕を見た。 あ…… 「よかったね周」 僕らを見ながら修斗さんがにこにこしてる。 「あの……ご褒美って?」 勢いでオッケーしてしまったけど、ご褒美ってなにをあげればいいんだろう。 「俺の言うこと何でも聞くこと! それがご褒美 」 何でも? 言う事を聞く…… あぁ…… いやらしいことしか頭に浮かばない。 勢いでオッケーしてしまったことに激しく後悔……でも今更撤回なんてできないよね。 「康介君も! 赤点免れたら俺、康介君にご褒美あげる!」 周さんに便乗して修斗さんも康介にご褒美をあげると提案し始めた。康介は顔を真っ赤にしてしどろもどろ。 「いや、俺は……いいです……大丈夫です、遠慮します!」 「遠慮すんなって。康介君にもご褒美あげたい! ねっ? 康介君の言う事何でも聞くから頑張って!」 修斗さんは楽しそうに言ってるけど、康介は赤い顔してパクパクしてる。康介、今頭の中が大変だ。慌てているのがよくわかって面白い。きっと色んなことを目まぐるしく考えてるんだろう。 「え……何でも? ……あっ、いや……俺は、うーん…… 」 真っ赤になって悶々としてる康介を見て周さんが突っ込んだ。 「康介、お前ムッツリスケベか! 何考えてんの? 顔真っ赤!」 「違っ! うるさい! そんな事……何でもないっ!」 大慌てで否定しながら、これ以上遠慮してると墓穴を掘ると思ったのか「ご褒美、楽しみに頑張ります」と諦めたように康介は言った。 きっと嬉しいんだけど恥ずかしくて素直にお願いが言えなくて困ってるんだよね。 修斗さんの事が好きなのバレバレなのに…… てか、修斗さんも康介の事好きなのバレバレだよね。 修斗さん、もどかしいだろうな。 食べ終えたお皿をキッチンに下げ、洗い物を手伝う。周さんはまた圭さんの指導で勉強を始めた。修斗さんは康介にぴったりくっついて康介がノートを書いているのを眺めてる。 ……ご褒美か。 僕は周さんにどんな事をお願いをされるんだろう。 考えてたら顔が熱くなってきた。変なお願い事じゃなければいいけど……とボンヤリと考えていたら修斗さんと目が合った。 「……竜太君もムッツリ」 小声で囁かれ、僕は恥ずかしくなって顔を逸らした。

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