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ドキドキの一夜

寝ているかもしれないからそぉっと布団に入ったのに、俺の気も知らないで修斗さんは楽しそうにこちらを振り向いてきやがった。しかも抱きつくようにして俺の肩のところに顎を乗せてくるからもうドキドキが止まらない。何してんの? 正気なの? 「ねえ、さっきみたいにぎゅーってしてよ! 康介あったかいんだもん」 「………… 」 あったかいんだもん……じゃねえよ! うひゃーーー! マジか! どうしよう! 「男同士だよ? 大丈夫でしょ…… 」 俺の動揺に気がついてか、男同士だから大丈夫だなんて言ってくるけど……いやいや、そんなの逆に男同士なのにあれやこれや焦りまくってる俺は既にアウトだよね。 ……これ以上何かあったら俺多分爆発して死ぬ。 「じゃあさ、少し話しようぜ……だからこっち向いてよ、康介」 康介、と呼ばれドキッとする。そして凄い嬉しい。緊張しながらも俺は修斗さんの方に体を向けた。 同じベッドに向かい合って横になる。 修斗さんの綺麗な瞳……吸い込まれそうだ。 「康介……こーすけ、こーうすけ 」 わざとなのか楽しそうに俺の名前を連呼する修斗さん。 「……恥ずいのでやめてください」 ただでさえ顔が目の前で恥ずかしいのに、この人はまた俺を揶揄って遊んでるんだ。 「俺だって照れくさいんだよ……」 そう言って修斗さんは俺の顔を見て赤くなった。 「康介、顔赤いよ?」 「修斗さんだって……」 なんだ、この微妙な雰囲気は。そう思ったら修斗さんが笑い出した。 「ほんと、面白いよな……俺らって」 面白いって…… いつも俺を揶揄って楽しんでるのは修斗さんじゃんか。こっちは好きな気持ちを抑えるのに必死だっていうのにさ。 なんとなく気まずくなっていると、静かなリビングに何やら遠くから微かな声が聞こえてきた。 (……あぁ……んんっ、ぁあん… ) ?? この声って…… あっ、と思ったら修斗さんに両耳を塞がれてしまった。 今の喘ぎ声?……竜? 俺の耳を塞いでる修斗さんの手を取り、どかしながら「これって……」と言いかけると、修斗さんは酷く困った顔をした。 「さっきもアンアン言ってたんだけど……また始まっちゃったみたいだね」 ……マジか? そしてまたすぐに修斗さんに耳を塞がれた。で……なんで俺、耳塞がれてんのかな? 何気に結構な力で耳を塞がれてるから本当に何も聞こえない。 修斗さんは真面目な顔をして頬を染めてる。 「修斗さん……なんで俺…… 」 耳を塞がれてんの? って聞こうと修斗さんの手を掴み耳から離そうとしたら、修斗さんが俺の耳元まで顔を寄せて「康介にはこういうの、聞かせたくない……」と囁いてきた。 修斗さんの手が俺の両耳を挟み込み、グッと顔を近づけてくるこの一連の動作が、まるでキスをされるのかと錯覚をしてしまい激しく胸が高鳴ってしまった。 「………… 」 頬を染めた修斗さんが、俺の耳を塞いだまま何かを喋った。 俺をジッと見つめ、その綺麗な瞳は潤んでいる。 ……聞こえないよ? 「今なんて……」 言ったんですか? と聞こうとしたけど、最後まで言い終えないうちに修斗さんの唇が俺の口を塞いだ。 え? 俺の耳を塞いだまま、軽く触れ合うようなキスをする。 でもすぐに「あっ…」という顔をして修斗さんが手を離し、おずおずと俺から少し顔を離した。 「ご、ごめん……思わず……」 いつもと違い、不安そうな顔をして俺を見る修斗さん。 驚いたけど……嬉しかった。 大丈夫、謝らなくていい。 「修斗さん……謝らないで。俺、大丈夫だから…… 」 そう言うと、修斗さんは嬉しそうにはにかみ笑顔を見せた。 可愛いな…… なんだかドキドキは止まらないけど、修斗さんとグッと近付けた気がして嬉しかったんだ。修斗さんの特別になれた気がして、少し俺は大胆になってしまった。 修斗さんの手を掴み、俺からもお返しにと優しく軽いキスをした。 深い意味は無い…… 修斗さんは思わずキスしちゃったんだよね? だから俺に謝ったんだよね? でも俺は嬉しかったから── 俺はさっき目覚めた時みたいに修斗さんを抱きしめて、また二人で眠りについた。

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