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苦手なもの

遊園地の開場と同時に門の前に並んでいた人混みがどっと中に入っていく。その波に押されるようにして僕らも中に入った。 まずは何に乗ろうか…… 案内板を見ながら最初は何に乗るかみんなで相談する。そんな中、周さんは興味がなさそうにぼんやりとしていた。 「……周さん? 周さんは何に乗りたいですか?」 僕が聞いてみても気がすすまないのか「竜太が乗りたいのでいいぞ」と、つまらなさそうな返事。こういうところ、実はあんまり好きじゃなかったのかな? ちょっと気になりつつも、僕は自分の行きたいところを提案した。 「んと……これ乗ってみたいです! ね? いいですか? さあ早く並びに行かないと……」 みんなと話しながら、近いところから順に乗りに行こうという事になり、話しながらどんどん進んでいく。修斗さんはにやにやしながら周さんの肩を叩いた。 「ほら周どうすんの? 竜太君あれ乗りたいんだって……だから俺らもいた方がよかっただろ?」 「……?」 どういうことかな? 僕がよくわからない顔をしていると修斗さんが教えてくれた。 「周ってばね、こう見えて絶叫系の乗り物とかまるでダメなんだよ。怖くて乗れねえの」 「怖くねえ! 苦手なだけだ」 「はは……苦手ね、わかったわかった。だからさ、竜太君と二人で来てたら殆ど竜太君ひとりで乗り物乗るはめになってたんだよ」 周さんはそっぽを向いて「絶叫系じゃないのだってあるだろうが……」とブツブツ言ってる。 そうだったんだ…… 何だか意外! そういえばこの遊園地、絶叫系ばかりだよ? でもそうだよね、静かなのもあるからそういうのに一緒に乗ればいいんだ。 「僕……別に乗らなくてもいいですよ?」 苦手なものに無理に合わせてもらうことはない。僕は周さんと一緒に遊園地に来られたことが嬉しいんだ。でも修斗さんが口を挟んだ。 「ほらみろ、それじゃ可哀想じゃんか。な? 周はダメみたいだから竜太君、俺と一緒に乗ろう! 」 そう言って修斗さんは周さんに「いいだろ?」と声をかける。 「わかったよ、行ってこいよ」 周さん怒るかな……って思ったけど、あっさり行ってこいなんて……本当にこいうのは苦手なんだな。 「じゃ、周さん待っててくださいね。僕修斗さんと行ってきます」 僕は絶叫系が大好きな修斗さんと陽介さんと圭さんと列に並んだ。康介も激しいのはあまり好きじゃないから、周さんと二人で待機だ。 まわりを見渡すと、轟音と共に物凄い勢いで通過していくコースターと人の歓声。 乗物に乗っている人や、道を歩いてる人達の楽しそうな様子を見て僕はかなりテンションが上がっていた。 大好きな人達と一緒にこうやって楽しんでる自分に少し驚く…… 昨年までの自分は、興味のある事と本、友達の康介と家族の関わりしかなかった。 それだけあれば十分だと思っていたから…… 友達と遊ぶってこんなに楽しいのに、今まで凄い勿体無いことしてたんだなぁと、少し僕は後悔した。 「ところで竜太君? 本当に大丈夫? 君こういうの乗った事ないでしょ?」 修斗さんが僕を見て心配してる。 「大丈夫ですよ。子供の頃近所の遊園地のコースターも乗ったことあるし 」 そう言ったら笑われてしまった。 「もう! ほんと大丈夫なの? あんなのと一緒だと思ってたらヤバいよ? 試しに乗ってみてダメだったら周と一緒にああいうお馬さんにでも乗ってればいいよ 」 修斗さんは横に見えるファンシーなメリーゴーラウンドを指差して笑った。 「え? 勿論メリーゴーラウンドも後で乗りますよ? あれなら周さんと一緒に乗れますもん」 僕が言うと、また修斗さんはお腹を抱えて大笑いした。

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