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チェックイン

竜太をロビーのソファに待たせてチェックインをしに行った。 たまたまなのか、めちゃくちゃ混んでる上に俺の担当が新人らしくさっきから話が通じねえ。やたら待たされたり同じことを聞かれたり…… 宿泊券だって偽物じゃねえよ。 この宿泊券を使うには、未成年だから親の承諾書が必要? それはさっき一緒に出しただろーが! 前もって予約だってちゃんとしてあるだろ…… もーー! こいつダメだ! あまりの手続きの遅さにイライラも頂点に達していた俺は思わず「話のわかる奴連れて来い」と怒鳴っていた。 あ? 俺はクレーマーじゃねえぞ? お前がちんたらやってるからだろうが…… いつまでも謝ってねえで早く部屋のキーをよこせや! 結局チェックインは出来たものの、ホテル側の手違いで部屋が変更になった。これは本来泊まる予定の部屋よりグレードアップしたから良しとするか。 そんなこんなでやっとチェックインが済み、俺は部屋のキーを手に入れた。 時間がかかってしまって竜太が待ちくたびれてんじゃないかと心配してロビーの方へ振り返ると、竜太がいたはずのソファには誰も座っていなかった。 あれ? 竜太どこで待ってたっけ? トイレかな? ロビーをキョロキョロしていると、知らない男に声をかけられた。 なんだこいつ…… 俺の直感が警戒警報を発してる。見るからに胡散臭そうな奴。 「君のお連れさん、別室で待ってるから一緒にきてくれるかな?」 少し派手目な出で立ちのその男はヘラヘラしながら俺にそう言った。 「……竜太をどこに連れてった? お前何なんだ?」 さっきから俺をイラつかせることばかり起きやがる。ふざけんじゃねえよ…… とりあえず竜太を見つけないことにはどうしようもないから、俺は怒りを抑えて極力冷静にそいつに聞いた。 「大丈夫、そんな警戒しないでよ。僕らはね、今時の男の子の日常のドキュメント映像を自主製作してるんだよ。見映えのするかっこいい子を探しててね、ちょうど君らが目に止まってさ、少しインタビューさせてもらいたくて…… 」 「日常のドキュメント? は? それってさ、まともなやつじゃねえよな? AV? そういうのよくあるよな? そんなんなら、プロ使えよ」 俺は嫌な予感しかしなかった。 「嫌だなぁ、自主製作だって言ったじゃん。プロなんて使えないっしょ。それにそんなんじゃないから…… 」 「ふざけんなよ! 竜太に何かあったらお前タダじゃ…… 」 「あは、やっぱり……君達ただのお友達じゃないんじゃないの? いいねぇ、思った通りだ!」 そう言いながら、そいつは携帯を取り出し何かを打ち始めた。少しして顔を上げ、俺を見るなりニヤッと笑う。 「これは合意の上だからね…… 」

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