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観覧車内 康介と修斗

「すげー! 見て修斗さん、夜景がめっちゃ綺麗!」 「……そだね」 「ほら、あんな遠くまで…… って修斗さん?」 「………… 」 修斗は楽しげな康介とは対照的に黙り込んで難しい顔をしていた。 「ねえ、修斗さん? どうしちゃったんですか?」 「……やだ。早く降りたい……」 窓の外の景色はもちろん、康介の顔すら見ずに俯いたままの修斗はボソッとそう呟く。 「 へ? ……もしかして高いとこ苦手?」 小刻みにウンウンと頷く修斗に康介は驚きを隠せなかった。 「はぁ? 修斗さんさっきがんがん絶叫マシン乗ってたじゃないですか!」 「あれは早えからいいの! ビューってすぐ終わるし楽しいから好きなの! ……これ遅いじゃん。上でモゲッと柱折れたら落ちんじゃん……」 涙目にも見える修斗に、康介は面白いやら可愛いやらでどうしても顔が笑ってしまってしょうがなかった。 「………モゲッって、擬音語おかしくね? ……てか、柱もげないから大丈夫ですよ」 「………… 」 康介は立ち上がり修斗の隣に座りなおした。そして修斗の腰に手を回してギュッと体を密着させる。 「じゃぁ、落ちるときは一緒ですね 」 少しでも恐怖心が和らげばと、康介は修斗に向かってそう言うと「康介、男前……じゃあ一緒に落ちようね」と言って修斗が笑った。 「いやいや! やめて! 俺まだ死にたくねーし……」 「俺、康介と一緒なら落ちても平気だよ」 「だから! なにそれ、俺はやだよ」 恐怖心も和らいだ修斗はいつもの調子で康介を揶揄って大観覧車を楽しんだ。

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