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ドキドキが止まらない

「周さん見て! 凄い綺麗……」 ゴンドラが上に上がるにつれ、日も暮れた外の景色は街明かりが煌びやかで凄く綺麗だった。夢中になった僕は窓にへばり付き外を眺める。外の景色に見惚れていると、不意に周さんが横に座ったのでちょっと驚いてしまった。 「竜太、外に夢中になりすぎ! ……俺の事も見てよ」 周さんに両手で腰を捕まえられ、ドキドキしてしまう。 「……夜景、うまく入るかわからないけど、一緒に写真撮ってみようか?」 そう言った周さんはグッと僕の肩を強く抱く。 カメラを持った長い腕を伸ばし、僕と顔を寄せ合いシャッターを押した。僕の肩を抱く腕が思いの外力強くてさっきからドキドキが止まらない…… 「周さん、顏……近い」 恥ずかしくてそう言うと「何を今更」と笑われてしまった。 「くっつかなきゃ一緒にカメラに入らないだろ?」 そう言いながら、周さんは僕の頬にチューッとキスをし、そしてパチリとシャッターを押す。びっくりする間も無く、周さんに撮った画像を見せられた。 二人で顔を寄せ合ってカメラの画面を覗き込む。そこに写っていたのはポカンとしている僕の頬に、澄ました顔をしてキスをする周さん。夜景もバッチリ写ってる。 周さん……かっこいいな。 「竜太、なんでこんなボケっとしてんだよ、ウケる! 可愛い」 写真を見た周さんが大笑いしてる。 ……恥ずかしい。 なんだかいつも僕ばっかりドキドキさせられて、周さんは余裕なんだ。 ちょっとだけ気持ちがシュンとしてしまい俯いていると、周さんがそんな僕に気がつき覗き込んできた。 「どした? 竜太?」 「……ズルイです。僕ばっかり……」 周さんは僕が言った意味が分からず首を傾げる。 「僕ばっかりいつもドキドキさせられちゃうんだ…… 周さんが好きすぎて……」 少しムッとしながらそう言うと、やっぱり周さんは僕を見て笑った。 「バカだな竜太は。ほら……」 そう言って周さんは僕の手を取り周さんの胸に押し当てた。 ドクドクと少し強い周さんの胸の鼓動が僕の手に伝わる。 「竜太だけじゃねえよ? 俺もドキドキしてるだろ? 俺だってお前の表情、仕草、言葉にいつもドキドキさせられてる。好きだからな……」 周さんは僕の手を掴んだままキスをした。 「……俺だって竜太の事が大好きなんだからな、忘れんなよ」 ジッと僕の目を見つめる周さん。ほらまた……ドキドキが止まらない。 二人だけの静かな空間── 頂上付近でゆっくりと、僕らは確かめるように何度も何度も角度を変えてはキスをした。

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