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遊園地デート お開き

閉園時間も近づき人も疎らになっていく。 僕らもそろそろ解散しようと、出口に向かった。 陽介さんと圭さんが二人笑顔で手を振り、駅に向かう。その姿を見送りながら康介も「楽しかったな! また学校でね」と手を振り歩き出した。僕と周さんはこのままホテルに泊まるから康介と修斗さんも見送ろうと手を振った。 「待って康介。俺らも今日はお泊りだよ? 」 突然そんな事を言い出し、修斗さんが康介の手を取り引き止めるから、康介はぽかんとしてそのまま固まってしまった。 「修斗達はどこのホテルだ?」 何の疑問も持たずに周さんがサラッとそう聞くと、僕らと同じホテルを予約していると修斗さんは嬉しそうにそう答えた。「明日の朝食は一緒に食えるな」なんて周さんが話を進めるもんだから、康介は慌てふためいて騒ぎ出した。 「なんで? 俺、泊まるなんて聞いてないし!」 「……いや、言ってないし」 「は? なんで言わないんすか? そこ大事なとこでしょ?」 「言うと煩いじゃん、康介……」 「うるさい? は? 煩いって何すか? 修斗さんがそんなんだからでしょ!」 「もういいよぉ、わかったから早くチェックインしよ」 修斗さんはうんざりしたような表情を見せると、スタスタとホテルに向かって歩き出してしまった。 「……いや、心の準備とか……色々荷物とか…… だって……心の準備……」 康介はブツブツとまだ何かを言っている。言いながらもしょうがないから修斗さんの後をついて歩き始めた。 「女の子じゃあるまいし、荷物なんてないだろ? どうせ明日すぐに帰るんだよ?」 「………… 」 「ほら、周たち待たせるのも悪いから早くチェックインしに行くよ」 「……はい」 観念したのか赤い顔をした康介は黙って修斗さんについて行く。 修斗さんも強引だなぁ…… でも、超鈍感な康介にはこれで丁度いいのかもしれない。 ホテルのロビーで僕らは修斗さんがチェックインをするのを待つ。 周さんは、さっきチェックインした時にモタついたからと言って、修斗さんにくっ付いて一緒にフロントに行ってしまった。 さっきと同じロビーのソファに康介と座る。 「……竜、俺どうしよう」 康介が情けない声を出し僕を見た。 「康介、ごめんね。宿泊券僕らが貰っちゃったから…… 今なら修斗さんと一緒に使えたのにね」 僕がそう言うと、やっぱり慌てふためいて首を振った。 「いや、そんな事ないって! てかさ、俺……どうしよう」 「どうもしないでしょ? 友達同士で泊まるのなんてどうってことないじゃん?」 あんまりにも康介が動揺しているから、僕はリラックスさせるためにそう言ったんだ。 修斗さんだって康介と一緒にいたいからこうやって強引にこんなことをしてるんだし、康介だって修斗さんのことが好きなのはバレバレなんだ。素直に喜んだらいいのに、康介にとってはそうもいかないらしい。 「違うんだ…… 友達ならいいんだけど、でも……俺、修斗さんの事が……好き……なんだよ」 俯いて赤い顔をして康介が小さな声でポツリと言う。 「……俺、変なんだ。ドキドキしちゃって。竜、どうしよう……」 康介は受付にいる修斗さんの後ろ姿を見つめながら不安そうにしてる。 「大丈夫だよ、康介。修斗さんも康介の事、大好きなんだから…… 康介の大切にしてる気持ち、たくさん修斗さんとお話しなよ。修斗さん、ちゃんと聞いてくれると思うよ?」 康介…… 修斗さんの気持ちにも早く気付いてあげてね。

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