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康介の告白①
俺は緊張しっぱなしで、とりあえず弁当は無意識のうちに完食していた。ビールも飲んでたけど、頭が冴えていくばかりでちっとも酔えなかった。
なんで修斗さんはホテルの予約なんかしてんだろう──
いや、単に竜たちも宿泊するし楽しそうだから……って感じだったのかな。
でも俺はダメだよ…… 意識しちゃってバカみたいに心臓がばくばく言っちゃってるんだ。
竜は修斗さんも俺のことが好きだからって元気付けてくれるけど、俺と同じ思いの「好き」じゃないんだよ…… こないだは俺にキスしてくれたけどさ、あれだってきっと何かのはずみだったんだ。
嬉しくて調子に乗って俺からもキスしちゃったけど…… あれはなんとなくの雰囲気、きっと修斗さんの気まぐれなんだ。
どうしよう……
俺、平静でいられるかな?
竜は心配して俺の話を聞いてくれる。
ちゃんと思いを伝えるといいよ、なんて簡単に言ってくれるけど、そんなの怖くて言えるわけがない。俺には無理そうだよ……
そんな事を考えていたら、周さんに名前を呼ばれた。
顔を上げると竜を後ろから抱きしめてる周さんが「これからイチャつくから早く出てけ」と言って、シッシッと追い払う動作をしていた。
イチャつくって……
その意識してしまうようなセリフ、俺に言わないでほしい。
修斗さんが明るく俺の腕を取り「じゃぁまた明日ね」と部屋を出る。この人は酔っていてもそうでなくてもあまり変わらずいつも元気だ。今も陽気に廊下を歩く修斗さんの後を、俺は重い足取りでついて行った。
マジか──
本当にこの人と二人で部屋に泊まるんだ。意識するなって言われても無理。俺、大丈夫かな。
エレベーターで降り、廊下を進む。修斗さんに導かれるままに部屋に到着した。
部屋に入るなり、修斗さんは無言でベッドまで歩いて行きドスンと座る。その様子がちょっと不機嫌にも見えて俺は動揺してしまった。
「……ねえ! そんなに俺と一緒なの嫌?」
思いがけない言葉に焦りが増す。嫌なわけない!
「……そんな事ない……です」
修斗さんが怒ったようにそう言ったのが少しショックで、鼻の奥がツンとした。
俺の気も知らないで……
色んな感情が渦巻いて泣きそうになってる自分に気付き俺は益々焦ってしまう。もう隠すのも無理なんだろうな。誤解されるのも嫌だし、もう俺も限界……
迷いや恐怖心を吹っ切るように、俺はブンブンと頭を振り窓の外に目をやる修斗さんの方へ歩み寄った。
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