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康介の告白②

ベッドに腰掛ける修斗さんの前に俺は立つ。 修斗さんは窓の外を見ていてこっちを全然見てくれない…… 俺がもだもだとやってるから、きっと怒っているんだ。 俺、修斗さんと一緒にいられて嬉しいのに…… 嫌がってると思われてる。 嫌じゃないんだよ。嬉しくて愛しくて…… 大好きだから、どうしていいんだかわかんないんだよ。 『大丈夫だよ、康介。修斗さんも康介の事、大好きなんだから…… 康介の大切にしてる気持ち、たくさん修斗さんとお話しなよ。修斗さん、ちゃんと聞いてくれると思うよ?』 さっき竜に言われた言葉が頭に響く。修斗さんに見つめられたら俺、絶対に言えなくなる。 話すなら……修斗さんが外方を向いている今しかなかった。 「修斗さん……ごめん。俺さ、修斗さんと一緒、嫌じゃないです。むしろ嬉しいんです。でも……でもずっと言えなかった事があって……」 もう引き返せない。心臓が痛い…… 俺はスッーと深呼吸をして決意を固めた。 「俺、修斗さんの事……好き……なんです。と……友達とか、先輩後輩とかじゃなくて、恋愛対象として見られるって意味で……修斗さんのことを好きになっちゃって……」 修斗さんがゆっくりと俺の方を向いた。俺は怖くなり思わず目を逸らし、言葉を続ける。 「……気持ち悪いですよね? せっかく仲良くしてくれてるのに。俺、修斗さんの事……そんな目で見てるんです。ごめんなさい……」 言いながら涙が溢れた…… 言ってしまった。 修斗さんの反応が怖い。怒るだろうか……呆れるだろうか。このまま帰ると言われるんだろうか。怒ってくれるならまだいい…… これっきり顔も見たくないなんて言われてしまったら俺はどうしたらいい? 頭の中を最悪の事態が駆け巡り、涙が止まらなくなってしまった。 「……康介? なんで泣いてるの?」 修斗さんがそう言いながら、座ったままで静かに俺の腰に抱きついた。俺は突っ立ったまま修斗さんの事を見ることも出来ず、返事も出来ず、涙も止まらない。 「康介が俺の事好きだって……ちゃんと知ってるよ?」 静かに、そしてはっきりと修斗さんはそう言った。 「ねぇ、こっち見てよ……気持ち悪くなんかないよ? 康介……好きだよ。俺だって同じ気持ちなのに」 え? 同じ? 修斗さんも俺と同じ気持ち? 恐る恐る俺の腰にしがみ付いてる修斗さんを見てみると、赤い顔をして涙目で俺を見あげている修斗さんと目が合った。 「……俺、康介の事好きだって何度も何度も言ってるのに……何でわかってくれないんだよ。バカかよ」 そう言った修斗さんはそのまま俯いてしまった。 「……やっと康介、好きだって言ってくれた」 そう言った修斗さんの声が涙声なのに気が付き、俺は慌てて修斗さんの顔を覗き込むようにしゃがみ込んだ。 は? 修斗さんが泣いてる? 嘘みたいだ! 「ばか! 見んなよ!」 俺から顔をそらす修斗さんの両手を握り、俺は確かめるようにもう一度聞いた。 「修斗さんも……俺の事……好き?」 修斗さんは耳まで赤くして頷いてくれた。 「……こないだは思わずキスしちゃったけど、ちゃんと好きだから……康介の事。康介も俺にキスしてくれたの、すげぇ嬉しかった……」 嘘だ! 嘘だ! 嘘だ! 俺の心臓、止まるっ! ちょっとパニックだし顔から火が出そうなくらい暑くてしんどい。 「はは……マジか! 修斗さんが俺の事……好き? 信じらんねえ! 嬉しすぎて……震えが止まらないよ。ほら……見て、修斗さん」 俺は修斗さんの両手を握ったまま、修斗さんの額に自分の額をくっつけた。手が震える。夢みたいだけどこれは夢じゃない。 「修斗さん、俺……大好きだよ……ちゃんとキスしていいですか?」 修斗さんは返事のかわりにキスで答えてくれた。修斗さんは遠慮がちに舌を差し出す。それに気付いた俺はその先に軽く吸い付いた。 チュッ…… 小さな音を立て、お互いの唇が離れる。気持ちが通じ合って、初めてのキス。嬉しくて信じらんなくて、それでも恥ずかしそうな修斗さんの顔を見たら幸せすぎて勝手に笑顔が溢れてしまう。 「康介……好きだよ」 「俺も、修斗さんのこと、好き」 俺たちは何度も何度もキスをしては「好き」と伝え、笑い合った。

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