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竜太の反抗期?

突然ハッと思いついたような顔をして康介が俺を見た。 なんなんだ? 凄えドヤ顔…… ムカつく。 「周さん! もしかしたら竜って……今が反抗期なのかもしれないですよ!」 ドヤ顔の康介が言った言葉に俺は何も言えずキョトンとしてしまった。 「反抗……期?」 は? なんだそれ? これには修斗も顔を上げて吹き出した。 「いや、いくらなんでもそれはないんじゃない? 竜太君だよ? 反抗期って! ウケる! ふふ…… 康介面白いね!」 修斗が揶揄うように康介にそう言った。確かに修斗の言う通りだ。今更? 反抗期? 「いやいや……竜だから、です! 周さんと出会ってから色んな感情を知ってあいつ凄い変わったじゃないですか。竜のお母さんから聞いたことあるんだけど、竜って反抗期無かったらしいんです。俺も荒れてる竜の記憶なんて無いし…… だから今、一番心を許してる周さんに対して反抗期が来てたっておかしくないんじゃないかな? って思うんです!」 康介が鼻膨らませて力説してくる。 ……どうなんだ? 言われてみればそんなような気もしてくるし…… この間も俺に言い返してたし康介の言う事も一理あるな。 修斗の方を見ると、これ以上は何も言わずに楽しそうに康介を見てる。それに、どうでもいいって顔をしているのがちょっとムカつく。 「なら仮に反抗期……だったとして、俺はどうすりゃいいんだよ?」 俺は素朴な疑問を康介にぶつけた。原因がわかったところでその対応策、解決案がなきゃどうしようもない。 康介は真面目な顔してじっと俺の事を見つめる。 「……わかりません」 そっと俺から目を逸らし、間の抜けた声でそう呟く康介を見て、修斗は堪らなくなったのかゲラゲラと笑った。 クソ康介、使えねえな…… 「……ねえねえ、何かに夢中になるとそれしか見えなくなるってさっき言ってたじゃん? それって人にも当てはまるの? 誰かに興味を持ったらその人に夢中になる……とか?」 「……?」 どういう意味だ? 何か、じゃなくて人に夢中? 「今までは周に夢中だったけど、周以外に興味を持った人が現れた……とか?」 「……??」 にやけながら俺を見る修斗。その修斗の口を慌てて塞ぎながら、康介が大声を上げた。 「ちょっと! 修斗さん? 何言ってんですか! 竜に限ってそんなことあるわけない!……周さん? 気にしちゃダメですよ? 大丈夫だから! 竜は周さんが大好きなんだからね!」 慌ててる康介を見て、やっと修斗の言った意味が俺にも理解できた。 「はぁぁ? んなわけねぇだろ! 竜太が浮気でもしてるって言いてえのか? おい修斗! 調子乗ってんじゃねえぞ! 喧嘩売ってんのか? オラ!」 俺は猛烈に腹が立って修斗の胸ぐらを掴んだ。修斗は相変わらずヘラヘラと笑っている。横で慌てた康介が俺を止めに入った。 「周さん! やめて! 修斗さんに乱暴すんなよ!」 康介が俺に掴みかかる瞬間、修斗が笑顔で俺の肩をポンポンと叩く。 「冗談だよ。竜太君が浮気なんてありえない。お前だってそれはわかるだろ? ……元気ねぇの周らしくないよ? 竜太君の事はしばらく気にすんな。……大丈夫だからさ」 「………… 」 修斗にそう言われて、少しだけ自信が戻った。 そうだよ…… 竜太に限って俺以外に興味がわくなんてない! 絶対ないない! ……反抗期なんだ、きっと。そうだよ、反抗期! 俺は親父のように竜太を見守っていればいい。 うん! そうしよう! 俺は無理矢理竜太を「反抗期」にして自分自身を納得させた。

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