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読めない気持ちと不安な心
周さん、僕が迎えに行くって言ってたのに…… 忘れちゃったのかな。
あれ、どう見ても寝起きの姿だったよね?
昨晩の電話から様子がおかしかった周さん。
さっきも僕が周さんの手を掴もうとしたら軽く振り払われた。
ちょっとショックだった。
……やっぱり怒ってるのかな? いつもの周さんなら、怒ってたらすぐにわかるのに。
そうなんだよ──
周さんは怒っていたり喜んでたり、態度がはっきりしているから感情わかりやすい人のはず。
それなのに…… ここ最近の周さんは何を考えているのか表情が読めない事が多かった。
教室に入ると志音が声をかけてきた。
「どう? 料理の腕は少しは上がった?」
そう、僕は志音にも周さんの誕生日計画を話したんだ。志音も一人暮らしでよく自炊をしてるから、ちょっと相談もしている。
簡単で短時間でもできるもの。
「料理はね、あまり進歩ないかも…… 昨日から僕アルバイトも始めたんだよ。立ち仕事が思ってたよりしんどくて、足が筋肉痛になるかと思った」
僕は志音にそう言って笑った。笑っていても、気持ちはちっとも楽しくない。
「……どうした? なんか元気なくない?」
志音に指摘され、僕はちょっと動揺してしまった。
「ううん、なんでもないよ…… 疲れてんのかな僕」
「そう? あんまりしんどかったら保健室に連れてってあげるよ」
「ありがと。大丈夫だから」
ジッと志音に見つめられる。
「なに?」
「いや、竜太君ってさ……わかりやすいよね。心配事でもあるんじゃない? うじうじしてるくらいならさ、話してみなよ。俺聞いてあげるよ? もちろん秘密厳守で」
そこまで見透かされてしまったらしょうがない。僕は思い切ってこれまでのことを志音に話してみた。
「それさ…… 周さん何か感じてるよね絶対。竜太君 嘘つけないでしょ? めちゃくちゃ顔に出るからやっぱり周さんには何かおかしいって思われてると思うよ」
「やっぱりそう思う? どうしよう……」
「竜太君は周さんには知られたくないの? どうしても内緒にしたいの?」
内緒にしたい……
恥ずかしいとか、驚かせたいからって理由もあるけど……
「うん…… だってさ、バイトも料理も、そんなことしなくていいって周さん言いそうなんだもん」
「そうだね。確かに言いそう。でも、秘密を通すなら周さんのフォローもちゃんとしないと変な誤解されても大変だよ? そこんとこ大丈夫?」
う……ん。
「誤解されるようなことは…… ないと思う。でも、メールとかは全然疎かになっちゃってるから気をつけないと。志音ありがと」
僕は周さんの誕生日の事で頭がいっぱいで、当の周さんの事は随分とほったらかしにしてしまってると改めて気付かされた。
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