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竜太を離したくない

昨晩竜太と一緒にいた知らない男。 様子のおかしい竜太。 竜太の反抗期だと自分を納得させてたけど、やっぱりそんな理由じゃ納得いかない。 考えれば考えるほど、寂しいし怖い…… 竜太から昼の誘いのメールが来てた。 久々に屋上にいく。だけど竜太の顔がまともに見られなかった。黙ってしまってる俺に、竜太は一生懸命気を使って話しかけてくれる。わかってる…… 竜太だって俺がこんな態度してたらおかしいって思うだろう。 それでもそんな竜太を「何か取り繕って必死なのか?」 なんて勘ぐってしまう俺がいた。 竜太を信じてやれてないって事に気付いて自分が嫌になる…… お弁当もそこそこに、いそいそと片付けた竜太は、いつもなら当たり前のスタイル、俺の膝の間に自分から座る。俺の顔を見ず、黙って俺の手を弄る竜太。俺の手を弄りながら、心配してくれる竜太にぶっきらぼうな返事しか出来なかった。 ……俺、竜太を手放すなんて出来ないよ。ずっと側にいてほしい。 あの男は誰なんだ? お前は俺に何を隠してるんだ? その答えが怖くて怖くて、俺は竜太を問い詰めることも出来ない。 言いたいことも言えないなんて、こんな事初めてだった。 それなのに…… 「今日の夜、電話しますね。周さんバイトでしょ? 僕、周さんとちゃんとお話したいし……寝る前に声が聞きたいから…… 」 竜太の言葉に背筋が凍った。俺に寄りかかるように座っている竜太の顔は見えないから表情はわからない。 夜に電話? 俺に話したい事…… 何だろう。 俺は何を言われるんだろうか。 今ここでは言い難い事? 面と向かってだと言い難い事? 胸が詰まって気持ち悪くなってくる。 うぇっ、吐きそう…… 「周さん? ……大丈夫ですか? 顔色が…… 」 竜太が動かない俺を心配して手を差し出すのを見て、思わず体を避けてしまった。 「……周さん?」 そういや朝も竜太の手を避けてしまったんだっけ。戸惑う竜太に何も言えず、申し訳なさと切なさに益々胸が苦しくなった。 「大丈夫だから! ……先に行ってて…… 俺、保健室行くわ……」 涙が溢れそうになり慌てて俯くと、一瞬何かを言いたそうな顔をした竜太は教室に帰って行った。 そんな竜太の背中を見送り、しばらくしてから俺はトボトボと保健室へ向かった。 保健室へ入り、黙って俺はベッドへ潜り込む。高坂が何か言ってたけど聞き取れなかった。 どうでもいい。ほっとけ…… 俺、こんなに苦しいの、初めてだ。

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