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妄想爆発
竜太君に男って……
何をどう考えたらそういう結末に辿り着くんだ?
周の思考回路がわからなかった。
こればかりは100%…… いや、120%ありえない。
周の様子にちょっと可笑しくて笑いそうになるのを堪え、俺は聞いた。
「なんで竜太君に男が出来たって思うんだ? いくらなんでもそれはありえないだろ…… 」
周は何かを思い出してるのか、益々体を縮こまらせ肩を震わせている。酷いなこれは。面白いやら心配やら……
「昨日の夜さ……竜太が、知らねぇ男と……家の前に……一緒に……いた。ズッ……さっき、……今夜電話で話がしたいって。グズッ……俺……別れ話されんのかな?……ズズッ……」
鼻をすすりながら嗚咽交じりに周がボソボソとそう教えてくれた。
「……?」
いやいやいやいや! ないないないない!
何からどう話してやればいいんだか、ちょっと俺の方がパニックだ。
てか、周ってこんなにネガティヴだったか? 何か悪いもんでも食べたとしか思えない変貌っぷりに俺は驚きを隠せなかった。
「ちょっと落ち着こうか? 竜太君に限ってそれは絶対ありえねえよ。お前だってわかってるだろ? なんでそんなにネガティヴ妄想爆発させてんだよ。怖えよ周……」
俺がそう言ったら周の肩の震えはひとまず止まった。
「だってよ、あいつ……なんか隠してるし……嘘ついてるし……俺からのメールも返信遅えし……知らない男に……笑顔でいるし……」
……だよな。それはやっぱり周でも気付いてんだ。
ほんと、竜太君が大事なんだな……こんな周なんて見たことないや。
大好きな竜太君に遠慮して何も言えない。別れるのが怖くて聞きたい事も聞けない。こいつにもこんな健気なところあったんだなと思ったら可愛く見えた。
でも、どうしたもんかな──
昨日は確かバイト初日だって言ってたから、夜に周が見かけた知らない男ってのは恐らくバイト仲間だろう。たまたま帰りが一緒だったか、送ってもらったか……
陽介さんが仕切ってるバイトだって言うし、いきなり初日から竜太君に手を出させるような環境にはならないよね。
……全部話しちゃえば誤解も解けて周も落ち着くんだろうけど、竜太君は必死に周に内緒にしてるのにバラしちゃうのも悪いよな。
でも、この状態の周がこの先またどんな妄想を爆発させて何をやらかすか、考えただけでも恐ろしいから……
ごめんな竜太君! バイトの事だけは周に言うぞ。
俺は心の中で、竜太君に向かって「スマン!」と手を合わせた。
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