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竜太の内緒事

「周、よく聞いて…… お前、竜太君と別れたくないんだろ?」 いかにも深刻そうな顔をして、俺は周にそう話を切り出す。周も目を真っ赤にさせながら、俺の話を真剣に聞こうとコクリと頷いた。 ……周のこんな真面目な顔も見たことねえぞ。やべ……面白い。 「じゃぁ、今から俺が言うことに対して絶対に怒らない! 周が聞いたことを竜太君には絶対に言わない! 何があっても知らないふりを通す! ……お前これを約束できるか? 出来るなら俺が知ってる事をお前に教えるよ……」 そう言うと、周は更に真剣な眼差しで小さく頷いた。 「ほんとだな? 約束するな? 周はこれから聞くことを、聞かなかった事にするんだぞ? 意味わかってる? マジで大丈夫か?」 俺が何度も念を押して言うもんだから、少しイラつきながら周はまた頷いた。 ……しょうがねぇよな、ごめんな竜太君。 これだけ言えば流石の周も大丈夫だろう…… 大丈夫だよな? 「実はな、昨日から竜太君アルバイトを始めたんだよ」 意を決して俺は竜太君の隠し事を周に話した。周は目と口を丸くしてポカンとしている。今、小せえ脳みそで一生懸命考えてるんだろうな…… 「俺に内緒で…… 竜太は昨日からアルバイト? バイト? 始めたって…… ことか? 俺に内緒?」 俺が言ったことを片言で復唱する周。外国人かよ。 「そうだよ」 「何で俺に内緒なんだ?」 「……それは知らないよ」 「……… 」 口を尖らせ、まだ納得のいかないような顔をしている。 「昨晩の知らない男ってのも、きっとバイト仲間だろうね。竜太君可愛くて夜道危ないから送ってもらったんじゃね?」 「……… 」 「どう? これで納得した?」 眉間に皺を寄せ、考え込んでいる周に「もうこれでわかったろ?」と話を纏めようと声をかけた。 「でもよ! 何で俺に内緒にすんだよ、竜太のやつ……!」 「ちょっと? ダメだよ、竜太君に言ったら。周が知ってるってわかったら、何で周さんが知ってるの? 酷い! 別れてやる! って言われちゃうよ?」 俺はわざと竜太君の声色を真似て周に脅しをかけた。俺の言ってることも大概可笑しな話なのに、こうも弱っている周にとっちゃ「別れる」というワードは禁句らしく、敏感に反応をして直ぐに神妙な面持ちに変わった。 「ダメだ! わかった! 俺が知ってるって事は言わない……絶対。内緒だ……うん、わかった!」 弱ってる周は信じやすいんだな……「別れてやる!」って理由がよくわからないのに、こいつ納得しやがった。 ま、とりあえず強引に周を洗脳する事には成功。 「心配ないよ。竜太君は周が大好きで大好きでしょうがないんだからさ。そんなの自分でもわかってるでしょ?」 俺が笑顔で周に言うと、物凄く嬉しそうな顔をしてウンウンと頷いた。 「……俺、ほんともうダメかと思った。死ぬかと思うくらい辛かった…… 修斗、ほんとありがとな!」 半ベソでお礼を言いながら周が俺に抱きついた。本当によっぽどだったんだろうな。周の重みでベッドに押し倒された状態で、俺はぎゅうぎゅうに抱きしめられ、周に感謝の言葉を浴びせられた。 「は……?」 聞き覚えのある声に顔を向けると、そこには怒り心頭な康介が立っている。機嫌よく教室に戻る周と入れ違いに、真っ赤な顔で怒っている康介が俺の横に座った。 ああもう! 面倒くさいなぁ…… 俺はなぜ保健室のベッドで周に押し倒されていたかの説明を康介にいちから話して、こちらもしっかりと納得させた。

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