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不審な客は…

竜太君はまだバイトを始めて一ヶ月も経っていないけど、大分慣れてきたみたいで安心している。 昔ほど人見知りもないし、普通に接客も出来ている。何も問題はない。あまり高坂を持ち上げたくないけど、これもしょっ中店に来てるあいつが竜太君をリラックスさせてくれてる影響もあると思った。 今日も暇な店内、須藤と二人でのんびりと仕事をする。俺がカウンターに入り、須藤がホールを見る。今日もいつもと変わらず、のんびりと仕事をこなしていくはずだった。 しばらくすると須藤が客と何かやり合って騒ぎ始めた。 普段静かな店内だから、ちょっと大きな声だと余計に煩く感じる。騒がしい方を見てみると、須藤がガラの悪そうな客から何やらイチャモンをつけられていた。 まだ他に客がいなくてよかった。てか、なんだ? あのガラの悪いの……… って!おい!? 「おい! 周! お前こんなところで何やってんだよ!」 須藤に突っかかってた客は周だった。目深に帽子をかぶってサングラスまでしている。 「なぁ…… まさかとは思うけど、お前それ、変装してるつもりか?」 周は俺の言葉なんて聞いちゃいなかった。めちゃくちゃ慌てた様子で俺の口を押さえにくる。 「ちょっ? 陽介さんっ! ……. 声! 竜太にバレるじゃん!」 「………… 」 おいおいおい…… バレるもクソもないわな、どっからどう見ても周じゃんか。 「お前、馬鹿じゃねえの? 今日は竜太君休みでよかったよ。いたら間違いなくバレてたな…… それで変装してるつもりなら、ちょっと考え直した方がいいぞ」 俺が周にそう言ったら、肩を落としてシュンとしてしまった。 ほんと、なんでお前がここ来ちゃうんだよ。 一生懸命竜太君はお前に内緒にしてんのに…… あと、こいつはなんで須藤に突っかかってたんだ?

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