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家族
お風呂を済ませ、リビングでテレビを見ながら二人で寛ぐ。
バラエティーを見ながらゲラゲラと笑う周さんの向こうに、キッチンで片付けをしている母さんの姿。
母さんも周さんを気に入ってくれて、普通に家族のように迎えてくれてるのを見ていると、本当のことを言っても受け入れてくれるんじゃないかなって思ってしまう。
……でも、やっぱり僕はまだ打ち明けられないや。
ごめんね、周さん。
冷蔵庫から麦茶を出して、周さんと僕の分をコップに注ぎ持っていく。
「はい。周さん」
麦茶を渡し僕は周さんの横に腰掛ける。いつものように周さんは僕の頭に腕を回し、胸元に寄りかかれというようにグッと引き寄せた。僕は当たり前にそれに従い、周さんにもたれてテレビを見ていた。
「お布団、竜太の部屋に運んでおいたからね。周くん私服だけど明日も学校でしょ? 制服着替えに早く出る? 朝ごはんはどうする?」
「いや、竜太の出る時間に俺も一緒に出ます。朝食はお母さんが面倒じゃなければ頂きます 」
母さんは「面倒じゃないわよ大丈夫」と笑ったけど、すぐにあっ! という顔をした。
「待って? それ周くんは学校に間に合うの? サボっちゃダメよ、ちゃんと学校行くのよ? それなら朝ごはんも用意してあげる。じゃあ、母さん先寝るわね、おやすみ 」
そんなやりとりのあと、しばらくのんびりと二人でテレビを見ていたけど、そろそろ寝るか…… と僕らも部屋に戻った。
「俺さ、竜太の母ちゃんすげえ好き」
ニコニコしてる周さんが可愛い。
「母さんも周さんの事、好きですよ。僕は今まで友達を家に連れてくるなんてことしたことなかったから余計に嬉しいんだと思います…… てか、僕友達なんて康介以外いなかったから……」
「そっか。でも嬉しいな俺。大人ってさ、俺の見た目で大抵は印象悪く見るんだよ。でも竜太の母ちゃんは最初っから変わらず優しく接してくれるから俺大好きだ 」
母さんが用意してくれた布団の上でゴロゴロと転がってる周さん。そしてベッドに腰掛けている僕に向かって両手を広げた。
吸い込まれるように僕はその胸の中に飛び込む。ギュッと抱きつかれ、そのままぐるんと周さんに組み伏せられ頭を抱えられてしまった。
真上から僕の顔を覗き込む周さんの顔……
目を瞑ったら、優しくキスをしてくれた。
「竜太も竜太の母ちゃんも、俺は大好き……」
そう言って周さんはもう一度僕にキスをする。
「竜太の母ちゃんも親父さんにも…… 俺たちの事、認めてもらえる時が来るといいな…… 」
……そうだよね。
「うん……」
僕は周さんにキュッと抱きついた。
「今日はこっちの布団で一緒に寝るか?」
そう聞かれたので僕は頷く。
そのまま周さんの胸に顔を埋めておやすみなさいと呟いた。
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