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診察の結果

周さんに抱きかかえられ車に乗り込み、そのまま急いで病院に向かった。 伊織は助手席で心配してくれているのか、ずっとスンスンと泣いていた。 ……ごめんなさい。 僕のせいで楽しい一日のはずが台無しだ。 病院に到着するとすぐに周さんが車から降り、ちょっと待つように言って一人で病院へ行ってしまった。そして車椅子を持って戻ってきてくれた。周さんは手際よく僕を車椅子に乗せ、母さんと伊織も一緒に受付に向かった。 担当してくれた医師に階段から転落したと言うと、足だけじゃなく全身を色々と調べられた。 そして診察の結果…… 左足、骨折。右足、軽い捻挫。頭も足以外の体も異常なし。腕と腰に痣ができてるくらい。 足首の骨折で折れた箇所に少しズレが生じているため手術をした方がいいとのこと…… 今は少し腫れているから、腫れがひいてからの手術になる。 四日後に入院、翌日手術── 「手術してから十日もすれば退院出来るし、君は若いからきっともっと早くに退院できるよ」 そう言って和かに医師は笑った。 ……最悪だ! 来週は周さんの誕生日があるのに。この日のために着々と準備をしてきたのに…… 僕は縋るように母さんを見る。 「始業式からしばらくは学校お休みね。連絡しとくわね」 そう言って苦笑いの母さんは僕の頭を優しく撫でた。 僕はショックでショックで何も言えない。 診察と入院手術に関する説明をボンヤリと聞き、ひと通り終わって診察室を出る。廊下の椅子に周さんと伊織が並んで座っていて、出てきた僕に気がつき駆け寄って来てくれた。 「……竜太どうだった?」 凄い心配そうな顔。そんな顔して僕を見ないで…… 心配かけてごめんなさい周さん。 「来週、骨折したところ…… 手術して……少し入院しなくちゃいけなくなりました……」 やっぱり自分の不甲斐なさで悲しくなり、涙が溢れてしまう。 僕は慌てて下を向き顔を隠した。 周さんはそんな僕を見て、僕が手術が怖くて泣いているんだと思ったのか「大丈夫だ。心配することねぇって、な?」なんて言って僕の頭を優しく撫でてくれる。 言葉が出ない…… 僕は何度も心の中で周さんに謝った。 母さんが病院で松葉杖を借りてくる。 「これ、レンタルなんだって。壊さないでちゃんと返せばお金返ってくるみたいだから、竜太、大事に使うのよ」 笑いながら母さんは僕に松葉杖を手渡した。 僕は人生初めての松葉杖を使い少し歩いてみるも全然上手く歩けない。これは慣れるまで相当かかりそうだけど、しょうがないや。 母さんが会計を済ますまで練習がてら通路の端っこを歩いていたけど、ずっと僕の様子を見ていた周さんが痺れを切らしたように呟いた。 「俺がおんぶした方が早いって」 そして松葉杖を伊織に持たせ、ヒョイッと僕をおんぶする。 会計を済ませた母さんが戻ってきて、周さんにおんぶされてる僕の姿にクスッと笑い「帰りましょ…」と言って車に向かった。

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