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入院初日

僕の入院初日── 今日から僕は入院生活になる。 それと同時に今日は学校の始業式だった。 周さんは学校に行かないで僕と一緒に病院に行くと言ってずっと騒いでたけど、学校にちゃんと行くようになんとか説得をして渋々登校してくれた。 気持ちは凄く嬉しいんだけどね…… サボらないで学校にはちゃんと行ってもらいたかったから。 僕は母さんと二人で病院へ行く。 父さんは僕が怪我をしてから一度だけ会えたけど、また忙しく出張だと言い仕事に行ってしまった。今度は何処だろう? 海外出張だと当分会うことはないだろうな。 父さんは「早く足が治りますように…」と言ってどこかの国のお守り人形を僕にくれた。五センチくらいの真っ黒な変な人形…… 持つ人の災いを食べて守ってくれるんだって。よくお土産と言っては僕に何かをくれるんだけど、毎回珍妙な物でちょっと可笑しい。でも僕の事を考えて選んでくれてるのがわかるから、とっても嬉しかった。 看護師さんに病室に案内される。四人部屋の窓際のベッド。四人部屋と言ってもまだこの部屋には僕しかいない。病室内でもメール程度なら携帯も使っていいし、パソコンもオッケーなんだって。 今日はこれから、明日の手術に備えての検査があるから、僕は少し忙しいらしい。CTやレントゲン、血の検査だったり心電図の検査…… あと、お風呂場の使い方の説明も受け、今日の検査が諸々終わったらシャワーを浴びておくように言われた。術後はしばらくはシャワーも浴びれないからね。 ……なんだかドキドキしてきちゃった。 今はかなり腫れもひいてるし落ち着いてるけど、術後はまた痛むのかな。 痛いの嫌だな…… 母さんは家の事があるから一旦帰って行った。 僕は入院生活のために母さんに何冊かの本を頼み、ベッドまわりの荷物を整理する。父さんから貰ったお守り人形、これは黒いから黒君と命名…… これをサイドテーブルの横にぶら下げ、携帯をとり父さんにお礼のメールを送った。 その日の夕方、シャワーも済ませ母さんが持ってきてくれた本を読んでいると、周さんと修斗さん、康介がお見舞いにきてくれた。 「竜太! 遅くなっちまった。もっと早く来るつもりだったのに……」 ベッドに腰掛け、周さんは僕に抱きついてきた。 「みんなありがとうございます。周さん、くっつき過ぎっ」 周さんが僕の体に顔をつけてスンスンしてる…… みんなの前なのに恥ずかしいんですけど。 「何ですか?」 「竜太石鹸のいい匂いする」 「ああ、明日からしばらくお風呂ダメだからさっきシャワー浴びたんです」 周さんが僕にベッタリで恥ずかしい。 しばらく他愛ない話をして、修斗さんと康介は帰っていった。 ベッドの横に椅子を付けて、周さんは座っている。 そのうちに母さんが来て、周さんと仲良くお喋りしているのを見て、なんか周さんも家族みたいだなぁなんて感じて幸せな気分になった。 夕飯の時間になり、周さんの「あーん」攻撃をかわしながら自分で食事をした。 「別に手を怪我してるわけじゃないんですから、一人で食べられます!」 僕らを見て母さんがゲラゲラと笑ってる。周さん、凄く心配してくれてるのはわかるんだけど、ちょっとさっきからやり過ぎなんだ…… 「周さん、さっきから恥ずかしいです。僕大丈夫ですから…… 」 「いいじゃんか。俺竜太のお世話したいもん」 母さんの前だし、勘弁してほしい。 周さんはどこでも自分ペースなんだな。それでいて、自分がやられるのは凄く照れるくせに、僕には平気で恥ずかしいことするんだ。これ絶対無自覚、わかってない。 もう…… 恥ずかしいやら嬉しいやら。 僕が食事を終えると、母さんは帰る支度を始める。周さんに「車で送るわよ」なんて話してる。その様子を見ていたら途端に寂しくなってしまった。そんな僕の心境がわかったのか、周さんが優しく僕の頭を撫でた。 「また明日も来るから、頑張れよ」 「うん…… ありがとう、周さん」 周さんと母さんは二人揃って帰っていった。

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