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竜太の母ちゃん
冬休みが終わり、今日は始業式。
竜太の大変な時に始業式なんてどうでもいい。竜太の入院に俺も付き添うって言ってんのに、始業式なんだからちゃんと学校へ行け! って竜太が煩かった。授業だってあるんだからサボっちゃダメだと竜太が言うから、しょうがなく俺は学校に行った。
授業に出てたって気が気じゃなくてなんも頭に入らねえ……
しょうがないからとりあえず保健室に行って、俺はベッドで横になった。ここでも高坂が授業に出ろって煩くて鬱陶しい。
「竜太が入院してるんだよ。気になって気になって授業なんかやってられっかよ」
あんまり言いたくなかったけど、煩わしかったから言ってしまった。
「なんだよそれ、竜太くんどうしたの?」
俺は階段から落ちて骨折した話をすると、俺の気持ちを察してくれたのかあまり煩く言わなくなった。結局その日は一日保健室だったり屋上だったり、サボって過ごした。
こうして、放課後急いで病院に向かう。
学校を出るときに修斗に捕まり一緒に行くから康介を待てと言って足止めをくった。
んだよ! 早くしろよ……
もたもたしていた康介のせいで病院に着くのが遅くなってしまった。
病院に到着し、竜太のいる病室に入るとベッドで本を読んでる竜太を見つけた。
「え……?」
ベッドに座っている竜太の姿が儚げで、胸がキュッとなってしまった。だって色が白くて細いから、こんなに所にいるだけでなんだか本当に病気になっちまいそうな気がしたんだ。怖くなって思わず抱きついてしまった。ほのかに香る石鹸の匂いに、シャワーを浴びたのだとわかる。もっと早く来てれば体だって俺が流してやれたのに……
修斗と康介が帰り、しばらくすると夕飯の時間になった。俺は竜太の世話をしたくてしょうがなかったのに、一人で食えるって怒られた。
なんだよ俺にお世話させろよ……
食事も終わって、面会時間の終わりも近づく。
「俺、泊まっていってもいいっすよ」
結構真剣にそう言ったのに、竜太の母ちゃんに「甘すぎ」だと笑われた。甘いと言うか、俺が一緒にいたいだけなんだよな……
ふと竜太を見ると、凄え寂しそうな顔をしてる。ほら見ろ……そんな顔すんなよ。キスしたくなるのをグッと堪え、俺は竜太の頭を撫でた。
入院は初めてだって言うし、やっぱり心細いよな……
頑張れよ……
みんなついてるからな。
竜太の母ちゃんが車で送ってくれると言うからお言葉に甘えた。
助手席に乗り込み、車がゆっくりと発進する。簡単に家までの道を説明していると、竜太の母ちゃんが突然俺に聞いてきた。
「周君はお誕生日っていつ?」
「へ? 俺の? ……あ! 明後日だ。八日…… で、なんで?」
自分の誕生日なんて忘れてたよ。でもほんと、なんで急に俺の誕生日なんて聞くんだろう?
「あら、もうすぐじゃない! 聞いてみてよかったわ。落ち着いたらうちでもお祝いさせてね」
「え? なんで? 俺の誕生日?」
なんで母ちゃんにお祝いして貰えるんだろう。
「周君は私からしたらもう家族みたいなものだもの。竜太も周君のこと大好きだし、私も同じ 」
「………… 」
車を走らせながら、竜太の母ちゃんは笑顔のまま話を続ける。
「竜太が階段から落ちた時、本当に周君がいてくれて助かったわ。あの時私、動転しちゃって…… 周君が的確に動いてくれて…… 本当にありがとう」
いや、それ言うなら俺だって相当動転してたけどね。
「いや、全然…… 俺も焦りました」
「うちはお父さんいつも家にいないから…… 私がしっかりしなきゃいけないのに。こういう時はちょっと心細くてね。でも周君が竜太の事、気にかけてくれるから凄く心強いの」
……俺は恐縮しちゃって言葉が出ない。
「これからも竜太の事よろしくね」
信号で停車している間、竜太の母ちゃんが俺の方に向き竜太と同じ笑顔で俺に言った。
そんなの、俺もだ。
「俺、竜太の事大好きだから…… 竜太のお母さんも大好き。俺こそこれからもよろしくお願いします」
これ以上、竜太の母ちゃんからは何も聞かれなかったから、竜太と恋愛関係だということは言わなかった。でも、言わなくてもきっと竜太の母ちゃんはちゃんとわかってるんだろうなって、俺は思った。
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