333 / 432
甲斐甲斐しく…
無事に手術は終わったらしい。
らしい…… というのは、気がついたらまた病室のベッドの上だったから。
緊張してドキドキしながら手術室へ入り、麻酔をして……そして今現在。目が醒めたら周さんと母さんがベッドの横でお喋りしてて、不思議な気分だった。
とりあえず、目の前に周さんがいてくれたから、僕は目覚め一秒で元気になれた。
でもね、やっぱりダメだ…… じわじわと襲ってくる足の痛み。気のせいだと自分を誤魔化してみたけどもう限界。足首が痛くて痛くて我慢出来なかった。
こんな痛みは生まれて初めて……
「足…… 痛い。痛い痛い……ゔぅ……」
しばらく我慢してたけど、限界が来て苦痛を口に出してしまったら、周さんが大慌てで病室から飛び出して行った。
「え?……周さん??」
母さんと僕が突然の周さんの行動にキョトンとしていると、すぐに看護師さんを引っ張って大騒ぎな周さんが戻ってくる。
……あ! もしかして看護師さんを呼びに行ってくれたの?
ナースコールあるのに……
「竜太が痛えって言ってんだ! 早くなんとかしてやってくれ!」
ちょっとちょっと! 周さん! 嬉しいけど、ちょっと待って。声大きい!
「はいはいはい…… 痛み止めの座薬出しますね。渡瀬さん、大丈夫?」
「はい…… すみません」
優しそうな看護師さんでよかった。 その優しそうな看護師さんからいきなり座薬を取り上げた周さんは「ほら!」と言って僕を見る。
「何ですか?」
「俺が座薬入れてやるから! 早く尻っ!」
凄い剣幕……
「周さんっ! 自分で出来ます! 大丈夫です! それにナースコールあるんですから、直接呼びに行かなくてもいいんですよ!」
周さんの慌てっぷりに僕も大いに慌ててしまい、恥ずかしさも相俟って全身から汗が吹き出てしまった。母さんは横で必死に笑いを堪えてる……
「はい、あなたも落ち着いてね? 術後はみなさん痛みどめを処方されて痛みを和らげてますから。夜も眠れないようなら眠剤出しますので、遠慮なくナースコールしてくださいね」
看護師さんは、僕ではなく周さんの方を向いて優しく丁寧に説明をしてくれた。
看護師さんが出て行く間際に「あと! 廊下は走っちゃいけません!」と言って周さんに向かって怖い声で怒ってから出て行った。
周さん、ポカンとしてるし怒られた事わかってるのかな? そして母さんは耐えきれず吹き出した。
「もう! 周君たらおかしいんだから! 竜太の事心配しすぎてくれてありがとうね!」
目に涙まで溜めて笑い転げてる。
僕も少し落ち着いてきたら、楽しくなってきた。
…… 周さん、顔真っ赤だし。
僕のこと、大好きだから沢山心配してくれたんだよね? 大好きだから、あんなに慌ててくれたんだよね?
「周さん…… ありがとう。いっぱい心配してくれて僕嬉しいです…… でも座薬は自分でやらせてくださいね」
そう言ってみんなで笑った。
周さんのおかげで、ちょっとだけ痛みが誤魔化せた気がするよ。
今日も夕食の時間まで周さんはいてくれて、痛みであんまり食欲がなかったけど周さんを心配させちゃうのも嫌だから、頑張って食べた。
なんだか甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる周さんが凄く可愛い。
多分母さんも僕と同じ事を思ってるみたいで、事ある毎にクスクスと笑っていた。
ともだちにシェアしよう!