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お見舞い
僕が入院中は入れ替わり立ち替わりでみんながお見舞いに来てくれた。最初はベッドから殆ど動けなかったけど、もう車椅子を使って談話室にも行けるようになっていた。
入院初日は四人部屋に僕一人だったけど、次の日から一人増え、二人に増え、三人になった。後から入院してきた二人も僕と同じ骨折が理由の入院だった。
一人は高校三年生の橋元さん。バイクの事故で、両足を複雑骨折…… 想像すると物凄く痛そうで、聞いた時思わず顔を歪めてしまった。もう一人は僕と同じ、高校一年生の小山君。以前手術で足にボルトを入れたんだって。そのボルトを抜く手術をするための入院。
そうだった……
僕ももう一度ボルトを抜くために入院しなくちゃいけないんだ。
嫌だな。
同室の患者も同年代ばかりだから、みんながお見舞いに来てる間も意気投合してついうるさくなってしまう。そして何度も看護師さんに怒られた。これも楽しい思い出。でも、みんなが来てる時って、やたらと看護師さんが近くをうろつくから怒られる事が多くてちょっと嫌だった。
今日は周さんは夜にバイトがあるからと言って少し早目に帰っていった。僕の夕食に付き合ってくれてるのは修斗さんと志音。
この二人の組み合わせって珍しいかも……
楽しくお喋りしながら食べていたら、看護師さんが部屋に入ってきて僕に言った。
「あまり沢山じゃなければ、病院食以外でも好きなもの食べていいからね」
「はい…… 」
それ、昨日も聞いたし。
今日の昼にも他の看護師さんに言われたよ。
看護師さんは満足げに病室から出て行った。
「…… なんなの? また同じ事言ってる」
僕が呟くと、志音も首を傾げる。すると隣のベッドの小山君が顔を出した。
「昼間さ、ナースセンターで看護師が雑談してんの聞こえちゃったんだけど、渡瀬君の所にお見舞いに来る友達がイケメン揃いだって盛り上がってたぜ。なんか理由つけてちょくちょく部屋に来るんだよきっと」
そう言って笑うけど、それはないでしょ…… 仕事中に不謹慎な。でももしそうなら、みんなをそういう目で見られるのはちょっと嫌だな。
「いや、そりゃしょうがないって。看護師も一部除いてお年頃だもん。そこのお友達なんかイケメンすぎて俺でもドキドキしちゃうからね」
小山君はそう冗談を言ってケタケタと笑った。
ま、志音も修斗さんも飛び抜けてかっこいいもん…… しょうがないけどさ。
「いいじゃん、ナースって憧れるよな。俺ゆうこちゃんがいいな 」
そう言ってヘラヘラする橋元さんと、そのお友達。あれ? 橋元さんは彼女さんお見舞いに来てなかったっけ?
……ナースねぇ。僕には全然興味ない。
「ごめんね、僕らがカッコよすぎて…… 惚れないでね」
修斗さんがそう言って、そこにいたみんなを笑わせた。
でも……
よく考えたら僕の所にお見舞いに来てくれるお友達は、みんなナースさんには興味ないよね?
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