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好きになってよかった

ぶらぶらと商店街を歩いてから、周さんの家に戻った。 いくら慣れてきたからと言ったって早々スタスタと歩けるものでもなく、正直少し足が疲れてきていた。松葉杖のおかげで多分普段使わない筋肉も使っているのだろう。しまいには足とは関係ない背中や腕まで痛くなってくる始末。そんな体を少し庇いながら歩く僕の姿を周さんが見逃す筈もなく、一旦帰ろうという事になったんだ。 「ほんと、ごめんなさい…… なんで僕、怪我なんてしてんだろう」 ほんと嫌になる…… こんな時に骨折なんて、ほんと馬鹿だよな。 「竜太が謝るな。何言ってんだ? 怪我で済んだからよかったじゃねぇか。階段から落ちたんだぞ? 下手したら頭でも打って今頃まだ病院だったかもしれねえんだ。それ考えただけでもゾッとする…… よかったよ、ほんと。こうやって二人で並んで歩けるんだ。幸せだよ。だから、そんな事もう言うなよな」 そう言って周さんは僕の頭をクシャクシャに撫でてくれた。 「周さん……ありがとうございます」 小さく呟き、僕は涙を堪えた。 周さんの家に到着し、夕食の予約の時間までのんびりと過ごす。 お茶を飲みながらゲームをしたりマンガを読んだり…… 僕はマンガをほとんど読んだことがないと言ったら、周さんが目を丸くして驚いていたのがとても面白かった。 何冊か周さんがオススメしてくれたのを読み始めたけど、読んでるとどうも眠たくなってしまうらしく、気がついたら周さんの肩にもたれて眠ってしまっていた。 どのくらい眠ってしまったのかわからず、目が覚めて慌てて謝ると周さんは優しく笑った。 「寝顔も最強に可愛くて、ずっと見てられたから大丈夫」 何それ。恥ずかしすぎる…… 「もう! そう言うのやめてください! 恥ずかしい……」 「照れてる竜太も可愛いぞ」 そう言った周さんにキスされた。 「周さんは僕の事、好きになってよかったですか?」 ふと思って聞いてみた。 「は? …… よかったに決まってんだろ? 何だよ竜太は違うのか?」 ううん、そうじゃないよ。 「違くないです。周さんの事好きになれたから僕は色んな事を知ることが出来ました」 周さんに寄りかかり、温もりを感じながら僕は続けた。 「僕の手術の日ね、母さんに言われたんです。…… 人との関わりを持とうとしなかった僕が周さんと仲良くなった事でどんどん成長していくのがわかって、凄く嬉しかったって……」 周さんの目を見る。 「僕が周さんの事を好きになった事で、母さんも凄く喜んでくれてる。僕は心のどこかで男の人を好きになってしまった事を母さんに否定されるんじゃないかって不安だったんです。でも違った…… 母さんは僕の好きって気持ちが恋愛感情でも全然構わないって…… 人を愛する気持ちは大事な事なんだって言ってくれました」 周さんも僕の事をジッと見つめ、静かに話を聞いてくれてる。 「周さん…… 僕、周さんと付き合うのにきっと後ろめたい気持ちが少なからずあったんです。ごめんなさい。でももう大丈夫。自分の気持ちに自信を持ちますね。周さん、こんな僕でもいいですか?」 周さんは黙って僕を見つめていたけど、ギュッと強く抱きしめてくれた。 「当たり前だろ! 俺もう竜太じゃなきゃだめだし!」 そう言って、優しくキスをしてくれた。 「ありがとうございます…… 周さん、大好き」 僕も首に抱きつき、周さんにキスをした。

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