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また次の約束を…
レストランの予約の時間が近付き、僕らは支度を始めた。
食事の時に渡そうと思ったけど、待ちきれずにすぐに渡してしまった。
「周さん。あの…… これ、プレゼントです。よかったら…… 開けてみてください」
照れ臭そうに「サンキュー」と言いながら、周さんは受け取ってくれた。
ガサガサとラッピングをほどき中からキャスケットを取り出すと、すぐにそれを被り鏡を確認する周さん。
「マジか! いいねぇ! 俺、似合う 」
嬉しそうにしている周さんを見て安心した。
「…… 気に入って貰えましたか?」
ちょっとドキドキして聞いてみた。
「うん、めっちゃいい! ありがとな!」
笑顔で僕に抱きつきキスをする 。
……今日はキスしてばっかだな。そう気がつくと、なんだか可笑しくなってきちゃった。クスクスと笑ってしまうと、不思議そうに周さんが覗き込む。
「ん? なんだ? どした?」
「あ、いや…… 今日はキスしてばっかりだなって思ったら可笑しくなっちゃいました」
そう僕が言うと、周さんは力強く僕にキスをしてきてしばらくぎゅうぎゅうと抱きしめた。突然で驚き、息ができず周さんの肩を叩いて抗議すると離れてくれ、大笑いする周さん。
「いくらでもキスしてやるぞ!」
そう言ってまた僕に抱きつきキスをした。
「ほら、そろそろ行きましょ?」
外はもう日が沈み、風も吹いてて少し寒い。
僕はクリスマスに周さんから貰った手袋を、周さんは僕があげたマフラーと帽子を被り、並んで歩く。
予約した店は、周さんの家から近いから程なくして到着した。
案内された席は、厚手の重厚感のあるカーテンで仕切られたカップル席。周さんと僕は斜に座り、まずは乾杯をした。
予め頼んでおいたのはコース料理。
前菜からはじまり、フカヒレの姿煮や定番の海老マヨ、アワビの炒め物や和牛のXO醬炒め…… 点心やデザートもついて全部で12品もある。
二人で楽しく食事をして、もうお腹いっぱい。
電話で予約した時に「お誕生日のお祝いで…」という話をしたからか、食後にお店からだと言って、何やら箱に入ったプレゼントを渡された。
帰り道「凄い量だったな!」と周さんと笑いながら並んで歩く。
勿体無いからと言って、周さんとフウフウ言いながら食べたんだっけ。
そして周さんの家に到着してからお土産の箱を開けてみると、中から立派な紅白饅頭が出てきて、周さんと二人でひっくり返って「もう食えねー!」って笑いあった。
「本当に今日はありがとうな、竜太。すげえ嬉しかったし、楽しかった! 足しんどいのに、俺のために頑張ってくれてありがとう…… 竜太、愛してる」
周さんが抱きしめてくれる。
「僕も周さんに喜んでもらえて凄く嬉しいです」
周さんの顔を見ると、何かを思い出したように周さんが僕を見つめた。
「そうだ! 忘れてた! あのさ、前に圭さんちで勉強会やったじゃん? その時のご褒美、まだ俺もらってない。何でも言うことを聞いてもうってやつ、今お願いしてもいい?」
突然そんな事を言いだすから、少しドキッとした。
何だろう……
「いいですよ。何ですか?」
恐る恐る聞いてみると、周さんがパッと笑顔になった。
「あのな…… また来年の俺の誕生日も一緒に祝ってくれ。そして、また来年ももう一度俺のお願い聞いてくれるって約束をして」
「え? そんなお願いされなくても毎年周さんのお祝いしますよ? …… 何で?」
当たり前のことすぎて、なんか拍子抜け…… 不思議に思い聞いてみた。
「いいんだ、それで。俺は毎年毎年、来年も一緒に竜太に祝ってもらう約束をするんだ…… な? いいだろ?」
周さんがそれでいいなら……
「はい…… わかりました。また来年も一緒にお祝いしましょうね、周さん」
こうして、周さんと一緒の一日が終わった。
はじめに計画していた誕生日祝いとは随分と変わってしまったけど…… これもまたいい思い出だって、周さんが笑ってくれるから、僕はそれだけで大満足だ。
ありがとう周さん。
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