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何? そういう事?
部屋に入り荷物を置くとすぐに俺は携帯を持ち外に出る。
何処に行くんだ!とか、勝手に動くな!とか塚田が騒いでたけど、そんなの無視。早く竜太の声が聞きたいから、俺はお構いなしにホテルを出た。
修斗にすぐ戻るからと伝えて、ホテルの中庭みたいなところを散策しながら竜太を思い携帯を眺めていると、俺の気持ちが通じたのかすぐに竜太からのメールの着信があった。
「……ん?」
以心伝心じゃね? と嬉しくなって画面を開くも、そこに書かれていたことは志音の家に泊まるという信じ難い事だった。
は? 何でだよ!
慌てて電話をするとすぐに竜太の可愛い声が聞こえる。
俺の大好きな声……
今日は康介と一緒に志音の家に泊まるんだと。めちゃくちゃ面白くないけど、でも俺がいなくて寂しいから……なんて可愛いことを素直に言ってくれる竜太が俺を安心させてくれた。
早く帰りてぇな。
同室の修斗に悪いからと言って早々に電話を切ろうとするから、俺は「愛してる」と伝えた。どうせ康介も志音もすぐ近くにいるんだろ? 少し渋ってる竜太だったけどそんなの知らねえ。別に竜太に意地悪言ってるわけじゃねえけど、やっぱりちょっとはヤキモチ妬いたから少しくらい困ってもいいだろうと思って、俺は「竜太も愛してるって言って」としつこくせがんだ。
ちょっと声のトーンを落として、竜太は俺に「大好きです」と言ってくれる。俺はそれだけでほっこりとした気持ちになり、素直に電話を切ることができた。
カーディガンだけしか羽織ってこなかったから、体が少し冷えてきた。あんまり遅くなっても悪いから、俺は急いで部屋に戻った。
部屋に入ると携帯を弄る修斗と俺に向かってプリプリと怒る塚田。俺は適当に塚田に謝ると、一番奥のベッドに横になった。
「なに? わざわざ外に行って電話してきたの?」
修斗が俺に聞くから、康介も一緒に志音の家にいることを教えてやった。
「なんか康介と一緒に志音ち泊まるんだと……修斗知ってた?」
驚くかと思ったらにこにこして修斗が頷く。なんだよ、知らなかったの俺だけか。
「うん、さっきメール来てた。志音君のビーフシチューが激ウマだって 。いいなぁ、俺も食いたいな」
ふぅ〜ん、と返事をした俺をジッと見ている塚田に気がつく。
「志音って、あのモデルの志音? 確か一年だよな? お前ら仲いいんだ、意外! 学校いち有名なキラキラ王子様と学校いち問題児な周と修斗……ちょっとジャンル違くね?」
なんだその不名誉な肩書き……
キラキラ王子様はちょっとわかるけど。
「仲いいってほどでもないけど、昼一緒に食ったり……飲んだりもした事あるよ。志音君は有名だもんね。あ! なんか周、少し不機嫌だと思ったら、そっかぁ、竜太君が心配? 大丈夫だよ、志音君はもう次の恋してるから……」
修斗が意味のわからないことを言ってる。
「なんだよ、もう気にしてねぇって……お前うるさい」
ただのヤキモチってことは自分でもわかってるんだ。修斗はいつもわかったような口を聞くからムカつく。
そんな会話を横で聞いてる塚田が口を挟んだ。
「そうそう、最近お前らとつるんでる一年ふたり、あれなんなん? 渡瀬君も志音に劣らず可愛くて有名だよね。いつもお前にべったりじゃん? 羨ましがってる奴いっぱいいるよ。相手が周だからみんな何も言えねぇみたいだけど…… 」
「お前! 竜太の事ニヤついて可愛いとか言ってんじゃねえよ」
俺が不機嫌MAXで塚田に言うと「スンマセン」と笑って首を竦めた。
「俺らが誰とつるもうが関係ねえだろ?」
俺が怒って塚田に話してると、横から修斗も口を出す。
「ちょっとぉ、塚っちゃん! 俺の康介だって可愛いだろ? 康介の事スルーすんなよな」
修斗はちょっと何言ってんだかわかんない……康介は特に可愛くもないだろ。
「は? 何? 俺の〜とか言っちゃって……そういう事? お前らそうなん? マジか!」
からかうように塚田が言うから、ムッとしながらも俺はそうだと言ってやる。
俺が否定をしないで返事をしたからか、塚田はふと真面目な顔になり「ごめん」と謝ってきた。
「……悪りぃ、からかうように言っちまって」
「塚っちゃんっていい奴だね」
そんな塚田を見て、修斗は笑った。
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