354 / 432
お部屋にて
修斗と塚田と部屋で寛いでると、隣の部屋の奴がドアをノックして入ってきた。
「あ……の、そろそろお風呂に……」
おどおどしながらそいつはボソボソとそう言って、そそくさとまた部屋から出て行った。
「そうだ! 二部屋毎に順番に風呂行けって先生説明してたな。ほれ! 周、修斗、さっさと行くぞ!」
急に思い出したのか、塚田がバタバタとカバンからジャージを取り出し支度を始める。
俺も修斗もマイペースにダラダラやってるから、塚田はひとりキーキー大騒ぎして急かしてくるのがちょっと面白かった。
ゆっくりと風呂を満喫して、また三人で部屋に戻る。
今度は大部屋で夕飯だと言って、またバタバタと塚田に尻を叩かれ支度をさせられた。
修斗は修斗で、ドライヤーを取り出し鏡の前でブォーブォーやって髪のセットを始めるもんだから、ブチ切れ気味の塚田が怒ってドライヤーを取り上げた。
「なんだよぉ、塚っちゃん。ドライヤー返して」
修斗が甘えた声を出す。
「あん? ふざけんな! 頭なんざタオルでゴシゴシしてりゃいいんだ! メシの時間! 早く大広間行くぞ!」
「ひゃあ 塚っちゃん、男らしい!」
修斗がふざけながら塚田の腕に抱きつき、それをイライラしながら払いのける塚田を見ながら、俺たちは大広間に向かった。
夕飯が終われば、あとは就寝時間までは自由行動。
自由と言っても、ホテルから出るのは禁止だし、廊下で騒ぐのもNG。
点呼の時に全員部屋の前で待機するということを塚田に何度も説明され、俺と修斗は頷いた。
「塚っちゃん、心配しなくても大丈夫だよ。俺ら就寝時間まで部屋から出ないし」
修斗がベッドでゴロゴロしながら塚田に言うと、首をぶんぶん振りながら塚田が溜息を吐く。
「もう、最悪だよ。連帯責任になるんだからな!まったく、スケジュールちゃんと把握しろよ。俺はお前らの引率員じゃねぇんだよ……一日目にして相当疲れたよ俺は……」
修斗の隣のベッドでうつ伏せに突っ伏しながら塚田が嘆いた。
「頼むから部屋から出ないでくれよ…… 」
独り言のように枕に向かって塚田が言うと、その背中に修斗が跨り肩をマッサージし始めた。
「大丈夫だよ。塚っちゃんごめんね、迷惑かけて。お詫びにマッサージしてやるよ」
「お、塚田よかったな。修斗凄えマッサージ上手いよ」
俺が声をかけた時には、塚田は既に気持ちよさそうに枕に顔を埋めてフンフン唸っていた。
……さて、と。
俺は自分のカバンから持ってきたビールを取り出すと冷蔵庫に入れた。
「あれ? 周なにやってんの? 今頃冷やすん? 遅いじゃん。俺の冷えてるからそれ先に飲んでいいよ」
「悪り、入れんの忘れてたんだよ。じゃあ一本貰うな 」
そう言って俺は先に入ってる修斗のビールを一本取り出した。
プシュっと開けると同時に、うっとりマッサージを受けてた塚田が振り返る。俺を見て目を丸くして驚いた顔をした。
「おまっ! 何飲んでんだよ!」
「………… 」
塚田の奴、驚いてるけどこの冷蔵庫の中、修斗が持ってきたやつ以外にも結構入ってるんだけど……
俺の今日の分三本、修斗の今日の分、俺が今取ったから二本。
で?
「この奥に入ってる三本は誰のだ?」
「俺の」
笑顔で塚田が返事をした。
ともだちにシェアしよう!