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修斗の幼稚園時代
やっぱり周は覚えてなかったな……
まぁ覚えてられてても少し複雑だけど。
普通に考えて、幼稚園の頃の記憶なんてもう薄いよね。
でも、俺にとっては周との出会いがあったから今の俺があるわけで……特別で大切な思い出。
そう、初めて俺が周と出会ったのは幼稚園時代。
俺は年長の時に引っ越してきて途中入園だった。
もうまわりは仲良しグループなんかも出来てて、ある程度の好き嫌いや意地悪の知恵なんかも付いてきてる、そんなお年頃。
しかも俺は生まれつき病弱で、何かというとすぐに入院……病院の世話になることが多かった。
身体つきもその時は同じ年頃の子供と比べて小さかったと思う。
幼稚園だって続けて一ヶ月通えたことなんてなかった。週に何度も休んでばっかり。
だから友達なんか出来るわけがなかった。
外遊びも出来ないから、いつも部屋の中から外で遊ぶ友達を眺めてた。
外で遊ぶ子供達……
その中で一際目立つ男の子。
それが周だった。
声大きい。
態度デカイ。
体もデカイ。
いつも誰かしらと喧嘩をして先生に怒られてた。
でもいつも見ていた俺にはわかった。
周って喧嘩を自分から仕掛けることは一度もなかったんだよな。
虐められてる子を助けたり、理不尽に喧嘩を売られたり……
で、体も大きくて強いもんだから、逆にいつも相手を泣かせちゃって怒られてるのは周ばっかり。
「せんせ、あのこ悪くないよ。ぼくみてたもん…… 」
俺は何度か先生にそう訴えたけど「修斗くんは優しいのね」なんて言って、先生は全然俺の話なんか聞いてくれなかった。
なんだかいつも悪者になっちゃってて可哀想だなって思ってた。
そんなある時、周が俺の存在に気が付いて話しかけてきた。
「おまえ外であそばねぇーの?」
ぶっきらぼうにそう言われて、少し怖かったのを覚えてる。
「ぼく、風邪ひくといけないから外いかない……」
その時の俺は、風邪をひくとすぐに喘息を引き起こしたり肺炎になったり、大抵は入院になるパターン。
親から散々言われてた。
『修斗はお部屋で遊びなさい』
本当はみんなと遊びたかったけど、気の弱い俺はそんな事も言えなかったんだ。
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