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就寝

ホテルに戻り、今日はスムーズに風呂と夕飯を終えて、塚田も満足そうに部屋で寛いでいる。 「観光の時、途中で周どっか行っちゃうんだもん。焦ったよ」 笑いながら塚田が俺を見た。 「変な婆さんに捕まってはぐれた。でも高坂と一緒に行動してたよ」 「周と先生、女の子引き連れて歩いてるんだもん、びっくりだよね 」 修斗も笑ってる。 そう、高坂と行動を共にしていたら、やたらと女に声をかけられて断ってもついてこられてムカついたんだ。 「なんでお前らばっかりモテんだよ!ムカつくなぁ」 「………… 」 いいやいや、ムカついてんのはこっちだろ。 「だって塚っちゃん、俺ら制服姿の思いっきし修学旅行生だよ? 普通そんな奴にナンパなんかしてこないって」 修斗が慰めるも、塚田はプリプリとしている。 「修斗だって逆ナンされてたじゃんよ……」 「あれ? そうだっけ? 可愛い子いなかったから記憶に無いや」 「おまっ……何だよそれ、一度でいいからそんな事言ってみたいよ」 修斗が項垂れる塚田の肩を抱いて、頭をヨシヨシしながら慰めていると部屋のドアがコンコンとノックされた。 「……高坂か」 ドアを開けると予想通りご機嫌な高坂が立っていた。 「昨日いただいた物、お返しに来たよ」 そう言ってまたズカズカと部屋に入って来ると、 冷蔵庫にビールを入れながら高坂は修斗の方を見た。 「あれ? 修斗くん、もう浮気?」 にやにやして修斗を見る高坂に、修斗は笑って答える。 「ん? なんで? 俺浮気なんてしないよ」 「だって塚田くんとそんなに密着しちゃって…… 修斗くんにその気がなくても塚田くんはそうでもなさそうだよ?」 そんな風に言われた塚田は、真っ赤な顔をして慌てて否定した。 「はぁ? 何言ってんすか? 全然そんな気ないっすよ! 変な誤解しないでください!こいつ男だし!」 ジタバタと修斗から離れる塚田を見て、修斗は「動揺しまくりじゃん」と言って爆笑している。 「センセって、すぐ人の事からかうんだもん。塚っちゃん困ってるじゃん」 相変わらずヘラヘラしている高坂と、同じように何を考えてるかわからない雰囲気の修斗が楽しそうに飲みながら話してる横で、塚田と俺もビールを飲みながら話に入る。 でもそのうち疲れてきたのか、眠そうに修斗が俺の横にやって来て、何かを言いながらうつらうつらし始めた。 「修斗くんはいつもそんな感じなの?」 不思議そうに高坂が俺に聞く。 ……ん? そんな感じ? 「へ? なにがどんな感じ?」 よく意味がわからず聞き返した。 「うん、仲良しだなぁって思ってね」 「ああ、いつもこんな感じ。こいつ昔より幾らか丈夫になったけど、疲れやすいんだと。今日もはしゃいでたから疲れたんじゃねえの?」 修斗との距離感が近いのも何となくわかってる。こいつとは違和感なくいつもこんな感じ。勿論変な気を起こすなんてこともない。 「ハタから見るとお似合いのカップルみたいだね」 「バカじゃねぇの? お互いそんな感情ねぇって。幼なじみだから気を許せんだよ」 思わず吹き出しながら、高坂に言った。 「だな。君たち入学した時からいつも一緒だったもんな」 そう言って、俺にもたれて眠ってしまった修斗の髪を撫でながら、高坂は微笑んだ。 「おい! お前がそういう風に触るのエロいからやめろ」 俺は修斗に触れる高坂の手をピシャッと払い、乱れた髪の毛を指で整えた。高坂はそんな俺にごめんごめんと軽く謝り、やっと部屋から出ていった。 「ほんと、あの先生、エロいよな……」 塚田が呆けっとして呟くから笑ってしまう。 「修斗も寝ちまったし、俺達ももう寝ようぜ」 そう言って、そぉっと修斗をベッドに寝かせて俺も寝る支度を始めた。 「周、おやすみ」 「おぉー、おやすみぃ」 俺らも各々ベッドに入り、就寝…… てか、寝れねぇんだよな。 結構な時間、俺は眠れずにベッドに横になったままぼんやりとしていた。 今何時だろう? と時計を目で探すと、ゴソゴソと人が動く気配がした。そっと見てみると、塚田がベッドから起き上がって座っていた。 寝ぼけてんのか? 塚田も眠れねぇのかな? なんとなしに塚田を眺めていたら、塚田は修斗のベッドに近づいていった。 ……? 塚田はゆっくりと修斗のベッドに上がり、体重をかけないようそっと修斗に跨った。 寝ている修斗の顔に顔を寄せていく塚田…… マジかよ。 「おーぃ、その辺でやめとけよ?」 ギリギリの所で俺が声をかけると、ギョッとして俺を振り返った。 塚田はアワアワしながら修斗から降り、ベッドの横の床にしゃがみ込んでしまった。 「……なんだよ、見てたのかよ……」 顔を両手で隠しながら、塚田はボソボソと呟いた。 「いやさ、修斗はあんなんだけど、一応一途に好きな奴いるからさ、そういうのは勘弁してやってよ……」 「ごめん。止めてくれてありがとう……」 塚田は真っ赤な顔をして深々と頭を下げた。 「俺、どうかしてる……もう寝るわ。ほんとありがとう周。おやすみ」 フラフラと塚田はベッドに入り、布団をかぶった。 全く……見なかった事にしてやるか。 修斗のずれた布団をそっと掛け直してやり、俺も眠りについた。

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