364 / 432
ただいま
修学旅行最終日、やっとこれで帰れると思ったらこれから土産物屋に寄って買い物だといい、ダラダラと男だらけの団体についていく。
だだっ広い所に土産物屋や食べ物屋が並んでいる。
そこで修斗は塚田を連れてあっち行ったりこっち行ったり、塚田はすっかり修斗の荷物持ちと化していた。
そういや俺も竜太に土産でも買おうかな。
何がいいだろう?
どの店がいいのか迷っていると後ろから誰かに肩を叩かれた。
「なんだよ、高坂か…… 」
「どうしたの? ひとり? ……修斗くんは?」
「修斗は塚田を荷物持ちにして買いもんしてるよ」
俺がそう言うとクスクスと高坂は笑う。
「修斗くんは人を垂らしこむのが上手いよね。塚田くん、修斗くんに惚れちゃってるんじゃないの? 昨晩は大丈夫だった?」
向こうで塚田を連れてる修斗を眺めた。
……こいつ、こういうの鋭いよな。
「別に修斗は自分からすすんで垂らしこんでるわけじゃねえよ。相手が勝手に惚れるんだ…… それにそもそも垂らしこむってなんなんだよ」
「あぁ、ごめんね。言い方悪かったよね。わかってるよ。修斗くんは悪気はないんだよね。モテる子は大変だ……」
謝んなら修斗に謝れ。
ふと高坂の手にある紙袋が気になった。
「なに? 誰かに土産?」
「あ……えっと、うん……お土産。あ! 橘はお土産どうするの? 買わないの?」
急にしどろもどろになりながら、土産を買わないのか聞いてくる高坂。
なんだ? 何焦ってんだろ。
ま、いいか。
「竜太に何買ったらいいのか迷ってんだよ。何がいいかなぁ…… 」
高坂は楽しそうに俺の買い物に付き合ってくれた。
「竜太くんは甘いもの好きだよね。スイーツ好きなんて女の子みたいで可愛いよね。こないだもさ、保健室でね……」
「はいはい! わかったからもう黙れ」
俺以外の奴が竜太のことを可愛いとかいってんのは何度聞いてもムカついてしょうがない。
でも、人気のお土産を色々と教えてくれた。
結局、竜太にはスナックパインと、なんだかフワフワしている甘いお菓子。お袋には海ブドウを土産に購入した。
こうしてやっと修学旅行を終えて、地元に帰る。
明日は学校、朝からちゃんと行くぞ。
竜太にやっと会えるんだ。
家に到着し、お袋に土産を渡すとかなりのオーバーリアクションで喜んでくれた。
「なに? 周がお土産なんて信じられない! 修学旅行よね? 竜ちゃん一緒じゃなかったのよね? それなのに今度は自分の意思で私にお土産を買ってきてくれたの? 凄い嬉しい!」
そう言って俺に飛びつく勢いで抱きついてくる。
「ちょっ! 離れろって! お袋に抱きつかれても嬉しくもなんともねぇって!」
俺は何とかお袋から離れると、自分の部屋に入った。
あんなに喜んでくれるとは思わなかった。
ちょっと嬉しい……
何だかホッコリとした気分で携帯を取り出すと、俺は電話をかける。
少しの呼び出し音の後、弾んだ愛しい人の声が俺の耳を擽った。
『周さん! お帰りなさい!』
「ただいま…… 竜太」
ともだちにシェアしよう!