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ごめんね

何やら焼きもちを妬いた康介が、プリプリしながら教室から出て行ってしまった。 「何であんなにすぐ怒るんだろうねぇ」 俺は隣の竜太君にそう言って笑う。 「そんなの修斗さんのことが大好きだからですよ」 真顔の竜太君にそうサラッと言われ、恥ずかしさに顔が火照った。 「それにあの写メ、本当くっつき過ぎだと思いますよ? 僕だって周さんから知らない人と顔くっ付けた写メ送られて来たらしばらく口聞きたくなくなるくらい嫌ですもん」 竜太君が言った例え話を聞いた周が、大慌てで頬張っていた焼きそばパンを飲み込んだ。 「……おいっ! 俺はそんな写メ送ってないぞ!」 こいつは相変わらず人の話を聞かねぇよな。 「例えばの話ですよ。わかってますって」 竜太君はそんな周に笑って話す。 全く微笑ましいカップルだこと…… 「でもよ、修斗。お前、俺がいるからってちょっと油断しすぎだったぞ。気をつけろよ…… 」 「なにそれ?……俺なんかヘマした?」 周が何か意味ありげな顔をしてそう言った。そして少し考えてから話を続ける。 「いや、お前がヘマしたわけじゃねぇから気にすんな……でも、とりあえず康介が言ってんのも当たってるっちゃ当たってるから……そういうこった 」 「………… 」 塚っちゃんか。 「もしかして俺、何かされた?」 「いや……俺が止めたから、何もされてねぇよ。寝てるところにキスしようとしてただけ。あいつ魔がさしたんだろ。猛烈に反省してたみたいだし…… ほっといてやれ」 そうだったのか。 俺の知らないところでとはいえ、康介に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 「俺、康介探してくる 」 焼きもち妬いてくれるのは正直嬉しい。 でも、悲しませちゃうのは嫌だから…… 「どうせ屋上か、保健室だろ…… 」 そう呟いて、とりあえず俺は保健室に向かった。 「センセ、康介来てる?」 保健室で楽しそうに会話している高坂と志音に話しかける。 「ん? 康介くん来てるよ。気分悪いって、そこで寝てるけど……」 そう聞くや否や、俺はカーテンの閉まってるベッドへ向かった。 ベッドに潜り込んで寝てるけど、康介だよね? 「おぉ〜い、康介?」 小声で話しかけるけど、無反応。 拗ねてるのかな? 無視しやがって。 俺は横の椅子に腰掛け、ベッドの康介を眺めた。 「なんだよ……拗ねんなよ。ごめんね。康介……」 康介は動かない。返事すらしてくれない。 「塚っちゃんとは何でもないよ? クラスメートで友達。それ以上でもそれ以下でもないから……だからそんなに怒らないでよ」 「………… 」 「こ〜すけぇ、何とか言ってよ。ごめんね。俺が好きなのは康介だけだからさ……」 自分が悪いとはいえ、こうも知らんふりされるとちょっと凹む。そのまま布団の上から康介を抱きしめようとしたら、背後でカーテンが開く音が聞こえた。 「修斗さん、誰に話してんすか?」 「うえ? へ?……え? 康介?」 思いがけないところからの康介の声に驚き振り返ると、ポカンとした康介が立っていた。 「修斗さんの声したから俺んとこ来るかと思って待ってんのに全然来ねえし……なんか遠くで修斗さん一人で喋ってんし。何やってんの? びっくりだよ」 口を尖らせて康介が言う。 カーテンの向こうでは高坂がクスクス笑ってる。 「修斗くん、康介くんのいるベッドは奥だよって言おうとしたのに聞かないで行っちゃうんだもん」 「なんだよセンセ、そんなのデカイ声で言えよ!」 ……てことはさ、これは誰? 「……勘弁してよ」 モゾモゾと布団が動き、中からまさかの塚っちゃんが顔を出した。 「なに? 俺のせいで彼氏と喧嘩でもしたの?……なんか、俺がフられたみたいになってんの納得いかないんだけど」 赤い顔をして塚っちゃんが文句を言ってる。 「ごめんごめん! 塚っちゃんは悪くないからっ!」 俺は慌てて謝ると、康介の方に向き直った。 「康介ごめんね。俺が無神経だった……謝るからさ、機嫌直して」 素直に俺は康介に謝り頭を下げた。 康介はチラッと塚っちゃんの方を見て、俺の顔をジッと見る。 「許してあげます。それに俺だって修斗さんの事大好きだから……修斗さんは俺のもんだから誰にもやりませんよ」 後ろで志音が揶揄うようにヒュゥっと口笛を吹いた。 「ばかっ! 急に恥ずかしいこと言わないの!」 康介のまさかの不意打ちに慌てた俺は、康介の腕を掴んで保健室から逃げ出した。 後で塚っちゃんにもちゃんと謝らないとな。

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