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初詣
今日はお休み──
朝から周さんが来るのを待っている。
僕の怪我のせいで行けなかった初詣に一緒に行ってくれるんだって。
「時期は過ぎちまったけどさ、気持ちが大事だろ? 俺は二人でお参りしたいんだ」
学校で急にそう言い出した周さん。
僕が年末からずっと言ってたのを覚えててくれたんだって嬉しかった。
お気に入りの服を着て、髪の毛もセットして……おめかしして周さんを待つ。
久し振りのデートだもんね。
準備ができたと同時に玄関のチャイムが鳴った。急いで外に出ると笑顔の周さんが立っている。
……え?
周さんの横には自転車。
「周さん、もしかして自転車で来たんですか?」
驚いてそう聞くと、周さんがそうだと頷いた。
「後ろに竜太乗っけてけば、移動が楽だろ?」
「え? でも二人乗りはいけないんじゃ……」
嬉しいのと照れ臭いのと、二人乗りは違反だからという背徳感。
「真面目かよ!」
……周さんに笑われてしまった。
僕は後ろに横向きに座り、周さんの腰に腕を回して掴まった。
周さんは僕が鈍臭いのをよく知ってるからか、何度も何度も振り返り確認をする。
「ちゃんと掴まっとけよ? 離したら落ちるからな。ほら……もっとギュッと掴まってていいんだぞ? 出発するけど……おい大丈夫か? ちゃんと座ったか? ……腕 」
「大丈夫ですって! もう行きましょ」
ゆっくりと自転車が走り出す。
周さんが自転車に乗っているのも初めて見たし、こうやって二人乗りをするのも初めての体験。
なんだか嬉しい。
「周さん、自転車持ってたんですね。普段何で乗らないんですか?」
僕は後ろから周さんの背中に話しかける。
「ん? 何でって、俺 歩く方が好きだもん」
周さんは自転車を走らせながら、何度も僕の手を掴んでくれる。
キュッってやったり、さすったり……
「手、冷たくねぇか? 大丈夫?」
手袋してるし、大丈夫だよ。
「大丈夫ですよ。ありがとうございます」
周さんは近所の神社に到着するまで、ずっと僕の心配をしてくれた。
「よかった! 竜太落ちないで無事に到着したよ。……大丈夫か? こっから歩くぞ」
そう言って僕の方を振り返ると、周さんはごく自然に手を差し出す。
ちょっと戸惑いながらも、僕はその手をそっと掴んでから歩き出した。
人も疎らな神社で二人でお参りをして、また周さんの自転車に乗る。
「今日は自転車だし、ちょっと遠くも行けるぞ。こないだの公園行くか? 今日はドーナツ屋も出てると思うし。こないだは竜太食べなかったから、今度は食べたいだろ?」
「え! 嬉しい! ドーナツ食べたいです! 行きましょ」
僕は周さんの背中をポンポンと叩き、腰にしがみつく。
さっきより少しスピードを出して、僕らは今度は公園に向かった。
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